2018/05/06

股関節の可動域制限の原因を考える

 

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松井 洸
ロック好きな理学療法士。北陸でリハビリ業界を盛り上げようと奮闘中。セラピスト、一般の方へ向けてカラダの知識を発信中。
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いつもお読みいただきありがとうございます!
リハ塾の松井です。

大腿骨頸部骨折やTHA術後の股関節疾患は臨床でも必ず診ると言ってもいいくらい多くいらっしゃると思います。

股関節疾患の方を担当した際に困ることの一つとして、股関節の可動域制限があります。

和式の生活環境の場合、股関節の可動域制限があると困ることが多いですし、歩行時においても股関節の可動域は重要な要素の一つです。

本記事では、股関節の可動域制限の原因、各運動方向への具体的な制限因子についてまとめています。

股関節の解剖学的な特徴

股関節は球関節に分類されるので、屈曲・伸展、内転・外転、内旋・外旋といって3軸の動きを伴います。

股関節が動く際は、この3軸の動きが複合的に合わさって動きます。

 

具体的には、
屈曲+外転+外旋

伸展+内転+内旋

 

単純に屈曲・伸展などといった1軸だけの動きというのは構造上ありえない動きですので、ROMexや筋力exを行う際はこの動きを意識しておこなうべきです。

この3軸の動きを実現しているのが「前捻角」「頚体角」です。

前捻角は、大腿骨の頚部が成人では約12~15°前方に捻れているというものです。
頚体角は、大腿骨頚部と骨幹部がなす角度のことで、成人では約125~135°の角度があります。

この前捻角と頚体角があることで、股関節の3軸を伴った動きが実現されています。

 

具体的な制限因子

屈曲可動域の制限

①.筋肉の要素

・大臀筋、中臀筋の柔軟性低下

股関節屈曲運動に伴って、臀筋群は伸張されますので、十分な柔軟性が必要となります。

股関節の屈曲時、大腿骨は臼蓋に対して後方に滑りますので、臀筋群など後方の筋群の柔軟性がないと十分に後方に滑ることができず、臼蓋の前方でインピンジメントを起こしてしまい痛みの原因となる可能性もあります。

さらに、腹斜筋群や胸腰筋膜を介して対側の広背筋とも連結していますので、腰部や対側の上肢からの影響で臀筋群が硬くなり、屈曲制限を起こしているとも考えられます。

・ハムストリングスの柔軟性低下

ハムストリングスは膝関節の屈曲と股関節の伸展にも作用しますので、柔軟性の低下により屈曲制限因子となります。

浅層にある大臀筋、隣接する外側広筋、大内転筋と癒着を起こしやすく、癒着することでハムストリングスや臀筋群単体の柔軟性の問題ではなく、筋同士が滑らないことによる制限が引き起こされます。

さらに、ハムストリングスは大腿二頭筋と腓腹筋外側頭、半腱・半膜様筋と腓腹筋外側頭間でも癒着が起こりやすく、下腿からハムストリングスを介して屈曲制限を起こしている場合もあります。

 

スーパーフィシャルバックライン(SBL)上にあるため、坐骨結節を介して下腿だけでなく、脊柱起立筋とも連結しており、体幹からの影響も考えられます。

 

・梨状筋の柔軟性低下

梨状筋は股関節におけるインナーマッスルの一つであり、臀筋群の深層に位置しています。

梨状筋は仙骨の前面から大腿骨頭のちょうど中央辺りを通って大腿骨大転子上縁に付着しており、直接的に大腿骨頭の後方への滑りを阻害する可能性が考えられます。

この筋が正常に機能することで、臼蓋に対して大腿骨頭が求心位を保つことができるので、関節適合性が良好に保たれます。
逆に機能不全を起こしていると、関節適合性が不良となり、臀筋群で股関節の安定性を得ようとします。
でずので、屈曲時は安定性を得るため収縮している臀筋群が伸張しにくく制限因子として考えられます。

・腸腰筋の機能不全

腸腰筋は股関節において最重要筋といってもいいくらいに重要な筋です。

とても重要な筋なのですが、深層にあるため普段の生活では使われにくく、硬く廃用を起こしてしまいやすいです。

 

梨状筋と同様に関節の適合性を高めているため、腸腰筋による股関節の適合性が得られない場合、臀筋群や大腿四頭筋などのアウターマッスルで固めて適合性を得ようとするため制限因子となります。

さらに、腸腰筋自体も硬くなることで屈曲時にうまく弛緩することができず、つまるような感覚が認められることがあります。

 

ハムストリングスと癒着を起こしやすい大内転筋とディープフロントライン(DFL)上で連結しており、ハムストリングス-大内転筋由来の腸腰筋の硬さが屈曲制限を起こすこともありますし、逆もまた然りです。

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②.骨の要素

・腰椎、骨盤の可動性低下

股関節の可動域制限においては、骨盤と腰椎との3つの関係性を適切に評価することが必要となります。

股関節屈曲-骨盤後傾-腰椎後弯

といった関係性があるため、骨盤が前傾方向へ制限されていると後傾が十分にでないので股関節屈曲も制限されます。

腰椎においても伸展方向に制限されていると股関節屈曲、骨盤後傾に伴って腰椎が後弯できないので股関節の屈曲にも制限が出ます。

 

骨盤後傾の制限因子としては、腸腰筋・大腿直筋・大腿筋膜張筋、中臀筋前部線維・縫工筋などの短縮・過緊張が挙げられます。

腰椎後弯の制限因子としては、腸腰筋・脊柱起立筋などの短縮・過緊張が挙げられます。

 

股関節だけでなく、骨盤・腰椎との関係を評価した上で股関節との関連を考えることが可動域の改善につながります。

 

・大腿骨の外転、外旋制限

股関節の屈曲において、股関節屈曲+外転+外旋が複合的に起こるということをお伝えしました。

ですので、大腿骨が内転、内旋方向へ制限されていると屈曲の制限因子となります。

具体的には、長内転筋・大内転筋・大腿筋膜張筋・腸腰筋などが制限因子として挙げられます。

 

伸展可動域の制限

①.筋肉の要素

・腸腰筋の短縮、過緊張

腰椎から小転子にかけて走行していますので、伸展時には十分な柔軟性が必要です。

しかし、普段の生活の中では腸腰筋が伸張される機会はほぼないため、固まりやすいです。

 

長内転筋、大内転筋とディープフロントライン(DFL)で連結していますので、内転筋群にも緊張が波及し、より股関節の制限を強固にしてしまいます。

また、小転子では大腿直筋の起始と癒着を起こしやすく、腸腰筋が過緊張を起こすと大腿直筋が優位に働き、癒着によってさらにそれが制限されます。

 

大腿直筋が優位となると股関節の動的安定性が得られにくいだけでなく、大腿骨頭の動きも出にくくなるため、可動域制限も強固となります。
腸腰筋が適切に機能し、大腿直筋が緩んでいる状態が理想と言えます。

 

・大腿直筋の柔軟性低下

腸腰筋が機能不全を起こすことで、大腿直筋が優位に活動します。

そうすると、股関節の動的安定性と股関節の動きを出すという役割の両方を担うので普段から使われる頻度が多くなり、緊張が強くなりやすいです。
そういう状態で大腿四頭筋の筋トレなどを進めると、緊張をより助長してしまうことになるので、結果として股関節はガチガチに固められてしまいます。

筋トレ自体が悪いわけではないですが、その時の身体の状態を把握した上で処方することが必要です。

緊張している、筋出力が低下しているのにも理由があって、結果としてそうなっているだけの場合が多いということを理解しましょう。

 

また、大腿直筋はスーパーフィシャルフロントライン(SFL)で腹直筋と連結しています。
腹直筋は円背姿勢などになると、短縮傾向になりやすいので大腿直筋は腹部方向へ引かれ、結果的に伸張性が低下してしまいます。

 

②.骨の要素

・腰椎、骨盤の可動性低下

股関節伸展においても屈曲と同様に腰椎と骨盤の関係性を捉える必要があります。

股関節伸展-骨盤前傾-腰椎前弯

このような関係性にありますので、骨盤が後傾方向に制限されると股関節の伸展も制限されます。

 

腰椎においても後弯方向へ制限されていると股関節の伸展が制限されます。

 

骨盤前傾の制限因子としては、大臀筋、中臀筋後部線維、ハムストリングス、大内転筋、腰方形筋などが挙げられます。

 

腰椎前弯の制限因子としては、腹直筋、横隔膜、腰方形筋などが挙げられます。

 

・大腿骨の内転、内旋制限

股関節伸展においては、股関節伸展+内転+内旋の複合運動が起こります。

具体的には、中臀筋、大臀筋、大腿筋膜張筋、腸脛靭帯などが大腿骨の内転、内旋を制限します。

 

評価のポイント

・腸腰筋の収縮と弛緩の幅が適切に機能している

・腰椎-骨盤-股関節の連動性

まずは、上記の2つのポイントに絞って考えてみてください。

そこからさらに問題点を絞っていき、局所の癒着や関節アライメントなど部分的な問題と腰椎-骨盤-股関節の連動など全体的な問題、このような局所と全体をいったりきたり視点を切り替えることができる幅をもつことが大事になります。

 

おわりに

股関節疾患ではもちろんですが、膝の疾患、足部の疾患、脳血管疾患においても股関節はかなり重要な部位ですので、必ず評価すると思います。

今回の記事を参考に評価、アプローチしていただけると幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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