2017/09/09

肩関節運動と肩甲骨の重要性と臨床応用

 

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松井 洸
ロック好きな理学療法士。北陸でリハビリ業界を盛り上げようと奮闘中。セラピスト、一般の方へ向けてカラダの知識を発信中。
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肩甲骨についてどの程度理解できていますか?

また、それを実際の臨床に活かすことができていますでしょうか?

「Yes」であれば、もちろん問題ないです!

しかし、「Yes」と自信をもって答えることができない方も少なくはないのではないでしょうか。

肩関節において肩甲骨の動きは非常に重要だと私自身は感じています。

今回は少しでも肩甲骨について理解を深めていただければと思います。

肩甲骨の動きの必要性

肩関節(肩甲上腕関節)の動きに対して肩甲骨が一定のリズムで動く、肩甲上腕リズムはよく知られていると思います。

さらに、上腕骨の動きに対して臼蓋が向きを変える、臼蓋骨頭リズムというものもあります。

 

この上腕骨と肩甲骨の関係が肩関節の動きにはとても重要です!とても!重要です!

大事なことなので二回言いました。笑

 

なぜ大事なのかと言うと、肩関節の関節運動で上腕骨だけが動くとどうなるか考えてみましょう。

本来は、上腕骨の動きに対して肩甲骨が動いてくれるため、関節内に負担はかからないようになっています。

 

しかし、肩甲骨が動かないと写真のように上腕骨頭は関節窩から外れる方向へ動くこととなり、関節内には負担がかかっており、それを制御するために関節包や靭帯、筋肉など軟部組織にも負担がかかることになります。

 

そもそも、痛みや可動域制限は構造的に破綻している結果、それ以上動かすと危険、使いすぎていて危ない!など身体が発しているサインです。

まずは、関節内に負担がかからないように関節を守ってあげること。

どうしたら関節に負担がかからないように守れるかを考えてあげることが重要です。

 

鎖骨の解剖

肩甲骨の動きの必要性を考えた上で、どのような構造でどのような動きをしているのか考えてみましょう。

 

肩関節運動における、胸鎖関節を支点とした鎖骨の動きとしては以下の相に分けられます。

第1相 肩関節外転0° 鎖骨の挙上0°、回旋0°
第2相 肩関節外転30° 鎖骨の挙上12~15°、回旋0°
第3相 肩関節外転90° 鎖骨の挙上30°、回旋0°
第4相 肩関節180° 鎖骨の挙上60°、回旋45°

表を見るとわかるように、90°までは鎖骨の挙上しか起こらず、それ以降で回旋の動きが起こってきます。

胸鎖関節の視点で考えるならば、90°を基準として90°より少ない角度、または90°より大きい角度で制限や痛みがあるのかどちらであるのか鑑別することで、鎖骨の挙上と回旋どちらで問題があるのか絞ることができます。

 

表の通り、肩関節外転90°を境に鎖骨の回旋が起こります。

肩関節運動の初期は肩鎖関節が主に動き、それ以降は胸鎖関節が主体に動きます。

90°からは肩鎖関節が主体となって動きます。

 

鎖骨を視点に考えると、90°を基準に胸鎖関節の問題なのか?肩鎖関節の問題なのか?

鎖骨の挙上に制限があるのか?回旋に制限があるのか?

 

このように鑑別できることで、評価・治療対象を絞ることができます。

 

鎖骨に付着する筋肉

鎖骨の制限を評価したら、それが何による制限なのかさらに詳細に評価する必要があります。

鎖骨に付着する主要な5つの筋肉

・胸鎖乳突筋
・大胸筋鎖骨部
・三角筋前部
・僧帽筋上部繊維
・鎖骨下筋

 

具体的には、鎖骨のどの部分で制限があるのかを評価します。

肩関節運動の初期は肩鎖関節が主に動きますが、それ以降90°までは胸鎖関節が主に動きます。

ですので、胸鎖乳突筋、大胸筋鎖骨部、鎖骨下筋が制限因子として考えられます。

 

90°以降は肩鎖関節が主に動きます。

三角筋前部、僧帽筋上部繊維が制限として考えられます。

 

さらに、各筋肉を個別に触診して柔軟性、関節運動に対しての伸張性を評価して優先順位をつけます。

#1になった筋肉から個別にストレッチをかけてみて鎖骨の動き、関節運動に変化はあるか再評価するという過程を繰り返していきます。

 

肩甲骨の運動方向

肩甲骨は胸郭上を挙上・下制、前傾・後傾、内転・外転、上方回旋・下方回旋のあらゆる方向へ動くことができます。

他動的に各方向へ制限なく動けることが理想です。

各運動方向に関与する筋としては以下に挙げています。

挙上 僧帽筋上部、肩甲挙筋
下制 僧帽筋下部、小胸筋、広背筋
内転 僧帽筋中部、大・小菱形筋
外転 前鋸筋、小胸筋
上方回旋 僧帽筋上・中・下部、前鋸筋
下方回旋 肩甲挙筋、大・小菱形筋、小胸筋

 

各方向へ動かしてみて、制限方向へ拮抗する筋肉を触診しながら抵抗感を感じたり、徒手的に短縮させてみて変化はあるかなど、一つ一つの筋肉を確認していくことで制限因子を絞ることができます。

 

ex)
下方回旋に制限があるとすると、僧帽筋上・中・下部繊維、前鋸筋による制限の可能性が考えられます。

僧帽筋上部繊維を触診しつつ、下方回旋へ誘導した際の僧帽筋上部繊維の抵抗感が他の筋肉より抵抗感が強ければこれ由来の制限の可能性が示唆されます。

さらに、徒手的に起始と停止を近づけ、下方回旋を誘導した際に可動域が増す、あるいは下方回旋に対する抵抗感が減弱したら、より僧帽筋上部繊維による制限の可能性が高くなります。

 

このように、まずはざっくりと制限方向を評価、それから制限因子はなにか特定していく作業をすることになります。

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肩甲骨と腱板筋の関係

上述した肩甲骨の運動方向を決定するのは挙げたような筋群が主体となっています。

しかし、上腕骨の動きに対して微妙に関節窩の向きを変える役割を持つのが腱板筋群です。

 

腱板筋群へのアプローチ=カフトレーニングというのが主流となっているような気がしますが、まずは腱板筋群が個別に機能しやすいような環境を作ることが重要であると感じます。

 

肩周りの筋群はたびたび癒着をおこして、重なり合う筋同士が関節運動時に互いに滑りにくくなっている場合が多いです。

この癒着を解消すると、筋同士が滑りあって、それぞれの機能を適切に発揮しやすくなります。

触診によって動きが少ない部位を特定し、そこに選択的に動きを入れてあげることで癒着を剥がしていくことができます。

 

ex)
肩関節屈曲に対して、腋窩から抵抗感を感じたとする。

触診で評価していき、前鋸筋と広背筋の間で特に制限が強いと評価したとすると、前鋸筋上から広背筋を剥がすように動きをだしていきます。

ある程度柔軟性が改善してきたと感じたら、その部位を押圧しつつ他動運動 or 自動運動によってさらにその部分に動きを入れていきます。

運動を繰り返すことで少しずつ癒着が剥がれていきます。

 

*回旋筋腱板についてはこちらをご参照ください。

 

肩甲骨の静的評価

肩甲骨の動きを評価する前に、まずは静的なアライメントから情報を読み取り、それを動的な評価に繋げると関連性を考えやすいです。

静的な評価のポイントとしては、下記の3つです。

 

①.肩甲骨内側縁の左右差

②.肩甲棘の傾きの左右差

③.下角の位置

 

これらの評価結果から、先ほどの表に記載した各運動方向の筋群のどれに制限があるのか予測を立てます。

 

肩甲骨内側縁の左右差

背面から肩甲骨内側縁と脊柱を触診し、その距離を左右で比べます。

この距離を見ることで、肩甲骨が外転しているのか、内転しているのか予測できます。

肩甲棘の傾きの左右差

背面から肩甲棘の両端を触診し、どちらが挙がっているか、下がっているか見ます。

外側端が過剰に挙がっていれば、肩甲骨は上方回旋していることになります。

反対に内側端が過剰に下がっていれば、肩甲骨は下方回旋していることになります。

 

さらに、頭方から肩甲棘の両端を触診し、位置関係を見ることで水平面上の肩甲骨の傾きも評価できます。

下角の位置

背面から肩甲骨下角を左右で触診し、どちらが挙がっているか、下がっているか比べます。

これを見ることで、肩甲骨が挙上しているか、下制しているか予測することができます。

肩甲骨の動的評価

静的評価からアライメントと制限因子を予測できたら関節運動に伴う肩甲骨の動きも評価する必要があります。

 

ポイントは、肩甲棘と下角です。

 

女性は男性に比べて手が小さいので、少し難しいかもしれませんが、示指で肩甲棘の内側端、小指で肩甲棘の外側端、母指で肩甲骨下角を触れます。

触れたまま、関節運動に伴って肩甲骨がどのように動くのか追っていきます。

この結果と静的評価を結びつけて考察してみてください。

 

肩甲骨と各部位の関係

肩甲骨は胸郭上に位置しており、筋によって動きが左右されます。

筋によって左右されるのですが、それ以前に胸郭の形状や胸椎の偏位でアライメントが変化します。

さらには、骨盤や下肢からの影響も考慮する必要があります。

 

*胸郭について詳しくはこちら

肩甲骨と骨盤の関係

見かけ上肩の位置や肩甲骨の位置に左右差が認められても骨盤の位置を修正すると肩甲骨の位置関係も変化する場合があります。

これでは肩甲骨のアライメントが何が原因で崩れているのか見えてきません。

ですので、まずは骨盤の位置関係を評価することが優先です。

 

*詳しい骨盤の評価の仕方はこちらをご参照ください。

 

肩甲骨と脊柱の関係

これも骨盤と同様で脊柱の歪みがあると、肩甲骨周囲の問題が絞りにくくなります。

ですので、こちらも肩甲骨の評価に取り掛かる前に修正しておくことで本当の問題点が挙がりやすいです。

 

*脊柱について詳しくはこちら

 

まとめ

①.骨盤、脊柱の評価(肩甲骨を評価できる環境を整える)

②.肩甲骨の静的評価

③.肩甲骨の動的評価

④.局所(筋肉など)の評価・アプローチ

 

このような流れで進めていくと良いと思います。

 

おわりに

いかがでしたでしょうか?

肩甲骨の動きが悪い!と考えても、そもそもそれは骨盤などによって二次的に動きが悪く見えるだけかもしてないですし、なんでそうなっているのか背景を探っていく作業がとても重要です。

肩関節への負担を減らすためにも肩甲骨の役割は非常に重要なものがありますので、しっかりと評価しましょう。

 

最後までお読みいただきありがとうございました!

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