2017/09/09

肩関節と体幹の関係と臨床での考え方

 

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松井 洸
ロック好きな理学療法士。北陸でリハビリ業界を盛り上げようと奮闘中。セラピスト、一般の方へ向けてカラダの知識を発信中。
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臨床でなかなか改善しない肩の痛み、可動域制限、筋力低下に悩まされていませんか?

肩関節は複数の関節や組織と密接に関わりあっています。

ですので、肩関節だけ見ていては一向に改善しない場合も多々経験します。

今回は肩関節と関係する部位の中でも脊柱にフォーカスして臨床での活かし方を考えてみます。

肩関節の可動域

そもそも肩関節の屈曲などの可動域に肩関節以外の要素はどの程度影響してくるのか知っておきましょう!

 

肩関節の屈曲を100%(180°)とした場合、

肩甲上腕関節:40%(90°)

肩甲胸郭関節(体幹伸展):20%

肩鎖関節:10%(30°)

胸鎖関節:10%(45°)

その他:20%

 

肩関節(肩甲上腕関節)のみの屈曲は全体の40%しか占めていません。

これから考えると、肩関節のみ考えていても屈曲角度やそれに伴う筋力は改善しないのはなんとなくわかるかと思います。

 

ROM=肩甲上腕関節+肩甲胸郭関節+肩鎖関節+胸鎖関節

 

このようにまず肩関節における可動域を分解してどういった要素があるのか考えることが必要です。

どこが制限されていて、制限されていないのか。

これが分かればどこへアプローチしたらいいのか自ずと見えてくるはずです。

 

脊柱と肩甲骨の関係

肩関節以外の要素が可動域に大きく関わってくるということですが、脊柱はどのように関わってくるのかをみていきます。

 

主に屈曲90°越えたあたりから体幹の伸展、脊柱の要素が入ってきます。

 

屈曲0-90°:肩甲骨が後傾してくる

屈曲90-120°:肩甲骨の後傾が減少し、体幹の伸展が増してくる

屈曲120-:骨盤の前傾も入り、体幹の伸展がさらに強まる

このように90°以降からは肩甲骨による動きを体幹の活動が上回り、最終域まで挙上します。

 

ここで考えてほしいのが、脊柱の可動域制限、特に伸展の制限があった場合はどうなるのか?

90°以降に脊柱の伸展が入ってくるが、伸展制限によって伸展できないとその分を他の部位で代償しなくてはいけません。

もし肩関節で脊柱の伸展を代償すると肩関節にはとても負担がかかる気がしませんか?

 

脊柱の伸展制限が原因で肩関節に負担がかかっていた場合、肩関節だけのリラクセーションやROM exでは改善しません。

脊柱は肩関節にかかる負担を減らす、安全に肩関節を動かせるための要素としてとても重要だと言えます。

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肩関節と他部位の位置関係

まず、肩関節を評価する際に大事な考え方がいきなり肩関節を触るのではなく、他の部位との位置関係を考えることです。

肩関節の制限が肩関節自体の問題なのか?

他の部位の影響によって相対的に肩関節のアライメントが変化した結果、制限が出現している場合は多いです。

ですので、他の部位を整えてから肩関節を評価しないと本当にニュートラルな状態で肩関節を評価できないということ。

真の問題が見えにくいということが言えます。

 

頭部が前方に突出していたら?

胸椎が過剰に後彎していたら?

骨盤が後傾位であったら?

 

このようにそれぞれイメージを膨らませて肩関節の位置はどのように変化するか考えてみてください。

 

頸部と骨盤の位置関係

位置関係を考える上で重要なのが、頸部と骨盤の位置関係です。

 

例えば、いわゆるHFP(head forward posture)のように、頭部が前方へ出ると下位頚椎は屈曲位、上位頚椎は伸展位となりやすいです。

下位頚椎の屈曲とともに上位胸椎も屈曲、後彎します。

さらに、肩甲胸郭関節は胸椎の後彎に伴い挙上・前傾位となりやすく、相対的に肩関節の位置も前方へと偏位してしまいます。

 

骨盤が後傾位であっても、腰椎が後彎してそれに伴い、胸椎が後彎、肩甲骨の位置が変化し肩関節の位置も変化してしまいます。

 

このように肩関節を矢状面の上下の関係で見ると、間に挟まれている脊柱は影響を受けやすく、肩甲胸郭関節・肩甲上腕関節も同様に影響を受けることが言えます。

 

胸椎・胸郭・肩甲骨の位置関係

頸部と骨盤という上下の関係をみると、間に挟まれる脊柱がかなり影響を受けてしまうということでした。

脊柱の中でも胸椎が与える影響を細かくみていきます。

 

胸郭は後方で肋椎関節により胸椎と連結し、前方では胸骨と胸肋関節で連結しています。

胸椎・肋骨・胸骨によって胸郭が形成されており、胸郭の上に肩甲骨が位置し、肩甲胸郭関節を成しています。

そして、肩甲骨と上腕骨によって肩甲上腕関節が構成されています。

 

胸椎→胸郭→肩甲骨→上腕骨

このような連鎖が考えられます。

胸椎が後彎したら胸郭がそれに合わせて形状を変える。

胸郭に合わせて肩甲骨の位置も変わる。

肩甲骨の位置が変われば、肩関節のアライメントも変わり、可動域・筋力も変わる。

 

胸郭のアライメントは胸椎に依存し、同様に肩甲骨は胸郭に、上腕骨は肩甲骨に依存します。

つまり、大本をたどっていくと胸椎を変化させないと肩関節も改善されないことがあるということです。

 

体幹筋の肩関節への影響

脊柱のアライメントが肩関節へ与える影響を説明してきましたが、もちろん筋肉による影響も考えなくてはいけません。

 

肩関節の挙上に関して、肩甲骨は後傾・外転・上方回旋します。

この肩甲骨の動きには前鋸筋が関わっていますが、前鋸筋が効率よく機能するためには体幹筋の活動が重要なのです。

 

スパイラルラインとディープフロントライン

肩甲骨の動き、mobilityを生み出すには反対の固定の作用、stabilityの働きが必要です。

この際に機能するのが「スパイラルライン」による筋連結です。

 

アナトミートレインで言うところのスパイラルラインによって前鋸筋→外腹斜筋→内腹斜筋→大腿筋膜張筋という、肩甲骨から反対側の股関節へ連結されます。

前鋸筋の起始部が外腹斜筋によって固定されていることで前鋸筋が十分に働き、肩甲骨のmobilityを生み出すことが可能になります。

 

では、腹斜筋群を鍛えればいいのか?というとそういうわけではありません。

スパイラルラインは身体を螺旋状に外側を覆っていますので、より身体の内側、中心部分がうまく動く、機能しないとスパイラルラインによる連結も活かされません。

その中心が今回のテーマでもある脊柱でありますし、「ディープフロントライン」というものがあります。

 

ディープフロントラインは大腰筋や横隔膜を始めとする身体の中心に形成されているラインです。

筋肉には拮抗筋⇆主動作筋、インナーマッスル⇆アウターマッスルという関係があるのでこの関係を考慮する必要があるということです。

 

※スパイラルラインとディープフロントラインについては以下をご参照ください。

アナトミートレインの構造を捉える!スパイラルライン(SPL)

アナトミートレインの構造を捉える!ディープフロントライン(DFL)

アナトミートレインの構造を捉える!ディープフロントライン(DFL)②

 

まとめ

・肩関節の可動域は、肩甲上腕関節+肩甲胸郭関節+肩鎖関節+胸鎖関節で構成される。

・挙上においては90°以降で体幹の活動が入る。

・肩関節のアライメントは他部位の位置に依存する。

・胸椎→胸郭→肩甲骨→上腕骨といった連鎖を考慮する。

・スパイラルライン⇆ディープフロントラインの関係を考慮する。

 

おわりに

いかがでしたでしょうか?

肩関節は複数の関節が関与し合っているため繊細で難しい部位です。

肩関節へどれだけアプローチしても変化しない場合は他の部位からの影響を考えてみましょう!

 

最後までお読みいただきありがとうございました!

 

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