2017/09/09

脊柱の解剖学的特性から4つの役割を考える

 

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松井 洸
ロック好きな理学療法士。北陸でリハビリ業界を盛り上げようと奮闘中。セラピスト、一般の方へ向けてカラダの知識を発信中。
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脊柱ってどうやって評価したらいいの?
どうやってアプローチしたらいいの?
そんな方も少なくないのではないかなと思います。
脊柱を評価・アプローチできることで改善できる症状も多くあると思います。
今回は基本的なところからどのように臨床で応用していくのかご紹介します。

脊柱の解剖から見る基本構造

脊柱は頚椎(7個)、胸椎(12個)、腰椎(5個)、仙骨(仙椎は5個)、尾骨(3〜6個)により構成されており、合計26個(仙椎と尾骨を入れると32〜35個)もの椎体からなっています。

それぞれの椎体間に椎間関節が存在し、一つ一つがわずかに可動性を持つことで全体として大きな動きを実現しています。

脊柱の解剖から見る役割

では、脊柱にはどのような役割があるのか考えていきます。

大きく分けると以下の4つです。
・脊髄の保護
・衝撃緩衝能力
・上下肢へ力を伝達する
・体幹を直立位に保つ

 

脊髄の保護

脊椎の脊髄腔の中を脊髄が通り、各椎体レベルで神経根と呼ばれるものを出しています。
脊柱が脊髄の周りを覆って保護する役割を担っているのです。

脊髄から直接出ている神経が神経根と呼ばれ、出る高位によって頸髄、胸髄、腰髄、仙髄、尾髄に分けられます。
脊髄は脊椎より短いので、成人では第2腰椎より下位では神経根のみが伸びており、馬尾と呼ばれます。

事故などの強い外傷が起こると脊柱と一緒に脊髄も損傷を受け、脊髄損傷となったり、なんらかの原因で椎間板の髄核や繊維輪に負担がかかると椎間板ヘルニアとなったりします。

脊髄が障害を受けると神経性の筋力低下や痺れ、異常感覚などが生じてしまいます。
ですので、脊髄を保護する脊柱はとても重要な役割を果たしていますし、柔軟性が高すぎていけないということです。

 

衝撃緩衝能力

衝撃緩衝能力とはどういうことかと言うと、身体にかかる外力、内力をともに軽減し負担を少なくするというものです。

これには、脊柱の生理的彎曲が関わっています。
脊柱には頚椎から順に前彎と後彎が交互になっており、これが衝撃を和らげる働きを担っています。
もし、この彎曲がなくて真っ直ぐだった場合、彎曲がある場合と比べて約10倍もの負担がかかると言われています。
つまり、彎曲が保たれていることで身体にかかる負担も減り、彎曲が一つ減るごとに身体には負担が大きくなるのです。

逆に彎曲が強すぎても剪断力という滑る力がかかるため、それもまた過剰に負担がかかることになります。

外力とは、例えば歩行時に足底からかかる床反力などを指し、内力とは、筋収縮により自ら発生させる力のことを指します。

外力で衝撃がかかるのはイメージしやすいかもしれませんが、自らの筋収縮によっても身体には負担がかかっているのです。

このことから考えると、筋力低下などは脊柱の衝撃緩衝能力が低下しているため、身体が無意識に筋収縮を抑制している可能性も考えられます。
この場合は、筋力トレーニングを繰り返しても筋力増強は見込みにくいことが考えられます。

 

上下肢へ力を伝達する

上下肢の関節運動の前提条件として、体幹筋活動が先行して起こり、体幹の安定化が得られて上下肢の運動につながります。

例えば、股関節の外転を行う場合、股関節から動かすのと腰椎から動かすのでは足底までの距離は腰椎からのほうが長くなります。

つまり、脊柱から運動が発現するほうが大きく関節を動かすことができます。
脊柱の可動性がないと同じくらい関節を動かすためには股関節の筋力はより強く発揮する必要がでますので、股関節にとっては過剰な負担となります。

体幹筋活動が先行することで、椎体の動きが起こり、それが上下肢へ伝わるのです。

これを考えるにはアナトミートレインの筋連結が理解しやすいかもしれません。

例えば、上肢で考えるとディープバックアームラインというものがあります。

図の通り、肩甲挙筋、菱形筋から小指までの連結があります。
手指を伸展させる場合、頚椎あるいは胸椎がまず動き、肩甲挙筋・菱形筋を伝って手指まで力が伝わるのです。
手指伸筋単独で動かすよりは、脊柱から動かすので身体にとってはエコですし、より大きな力を発揮できます。

※アナトミートレインについては下記の記事をご参照ください。

アナトミートレインとは?筋膜の繋がりを知る

 

体幹を直立位に保持する

これは見ればわかりますが、身体の中央に脊柱は位置していますので家で例えると大黒柱みたいなものです。

このしっかりとした脊柱という支柱があることで、それを取り巻く体幹筋群によって体幹の安定化が図られ、抗重力位でも身体を直立して保持することができるのです。

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脊柱の運動特性

脊柱にはカップリングモーションと呼ばれるものがあります。
これは、脊柱の側屈に伴って回旋が起こるというものです。

これを理解しておくことで、脊柱のアライメントの崩れがどこが起因となっているのかイメージしやすくなります。

カップリングモーションに関しては諸説ありますが、ここではシンプルに以下のように考えましょう。

上位頚椎:側屈+対側回旋
下位頚椎:側屈+同側回旋
胸椎:側屈+同側回旋
腰椎:側屈+対側回旋

ですので、側屈制限が回旋制限が原因となって起こっている場合もあるし、その逆もありえます。

脊柱の運動制限を考えるには、カップリングモーションを前提に置くことで、考えやすくなります。

 

脊柱アライメントの評価

①.視診でざっくりと前額面、矢状面から脊柱のアライメントを全体的に評価

②.棘突起を示指と中指で左右から挟み、頚椎から下へ向かって真っ直ぐなぞるように触診
  この際、右手で触診した場合は示指で棘突起がひっかかれば椎体の左偏位、中指でひっかかれば右偏位となります

③.偏位があった椎体の中でもどの椎体が起因となっているのか評価
  例えば、胸椎レベル、腰椎レベルで何個か偏位した椎体があったとすると、胸椎の偏位があって二次的に腰椎の偏位が起こ
 ったのか、それとも胸椎の偏位が二次的に起こったのか、見かけ上偏位しているように見えているだけなのか評価する必要
 があります。
 腰椎の偏位を正す方向へ徒手的に誘導した状態で胸椎の偏位をチェックし、もしも偏位が軽減、消失していれば腰椎が起因
 となって胸椎が偏位したように見えていただけと仮説が立ちます。

④.③の評価から原因となったレベルの中からさらに原因となる椎体を評価
  例えば、③の評価で腰椎レベルが原因となっていそうだと判断したとすると、腰椎の中からさらに原因となる椎体を特定し
 ます。
 偏位している椎体を左右へ軽く動かしてみて、痛みあるいは硬くて可動性がない部分が原因となる可能性が高いです。
 逆に過剰に可動性がある椎体は、硬い椎体を代償して過可動性となっている可能性が高いので硬い椎体を優勢して探しま 
 す。

⑤.原因となった椎体の偏位方向から偏位を起こしているであろう筋肉をリリースする
  リリース方法はなんでもよいです。持続圧迫して緩むのを待つ、筋膜リリース、筋腹を引き離すようにしてダイレクトにス
 トレッチをかける、などなど。

⑥.介入後に椎体を再評価して可動性がでれば、全体のアライメントも再評価する
  再評価して全体のアライメントも整えば、特定した椎体が原因となって全体のアライメントを崩していたことになります。
 アライメントが変化しなければ、①〜⑤を繰り返します。

このように、偏位した椎体が本当に偏位しているのか?偏位しているように見えるだけか?
これを考えなければ、一時的に偏位が改善されてもすぐに元に戻ってしまいます。

しかし、最も重要なのはアライメントを整えてどうしたいのか?ということです。
ただアライメントを整えるだけではセラピスト側の自己満足に終わってしまうので、アライメントを整えた先を見据えて、それを前提に評価・アプローチしましょう。

 

脊柱の触診

椎体を触ることに慣れていない場合は胸椎の5番がどこにあるのか?腰椎の2番はどれなのか?
たぶんわからないと思います。

ねじれていたりするので、完全にみんな同じとは言えませんが、以下の指標を参考にしています。

・C7(頚部の運動で動きが認められるのをC7、認められないのをT1)
・T7-8(肩甲骨下角と同じ高さ)
・T12(第12肋骨をたどった部分)
・L4-5(腸骨稜の高さ)

これを参考にして触診してみてください。

 

まとめ

・脊髄の通り道、脊髄を保護している
・生理的彎曲によって衝撃が軽減される
・わずかな椎間関節の動きによって上下肢へ力が伝達している
・カップリングモーションを考える

 

※頚椎、胸椎、腰椎のそれぞれ下記の記事に詳しく書いてあります。

頚椎の痺れや痛みに対応する捉え方

胸椎のリハビリテーション展開を3つの特徴から考える

腰椎のリハビリテーション展開を構造的・機能的特性から考える

 

おわりに

いかがでしたか?
脊柱というと難しいイメージがありますが、ここに介入することで確実に大きな効果が得られることを私自身実感しています。

ぜひ、練習を重ねて臨床でも実践してみてください!

最後までお読みいただきありがとうございました。

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