筋力トレーニングの基礎!下肢の機能を最大限に引き出す2つのポイント

 

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松井 洸
ロック好きな理学療法士。北陸でリハビリ業界を盛り上げようと奮闘中。セラピスト、一般の方へ向けてカラダの知識を発信中。
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いつまでも変わらない膝の痛みに、筋力が足りません!と言って大腿四頭筋のトレーニングを指導している。

大腿骨頸部骨折後の方に対して、なんとなく中臀筋のトレーニングを指導している。

このように筋力トレーニングを指導していませんか?

なんとなく指導していても結果は出ません。

本記事を読むと、下肢の効果的な筋力トレーニングの方法が理解できます。

下肢の障害は臨床で最も担当する機会が多いと思うので、ぜひ最後まで読み進めてください。

 間違った筋力トレーニング

前回の内容をまだ読まれていない方は以下のページからどうぞ。

前回の内容をざっくりまとめると以下の通りです。

・単一の筋肉のみトレーニングすることの間違い
・メジャーな筋肉のみをトレーニングすることの間違い
・特定の肢位でトレーニングすることの間違い
・インナーマッスルが働いた状態でトレーニングする

上記のポイントを考慮した上で筋力トレーニングを指導するべきです。

下肢のトレーニングをする場合に当てはめて考えてみましょう!

下肢の筋力トレーニングをする前の前提となる条件

ここでは、変形性膝関節症の方を例に考えてみます。

特徴的な代償動作としては、立脚中期に股関節外旋、膝関節内反、足関節が回内しラテラルスラストが起こることでしょうか。

この代償動作がある状態とインナーマッスルが効いている状態との差は何かを考えることがポイントです。

順に考えてみると、股関節が外旋してしまうのはなぜか?

・そもそも内旋可動域が制限されている
・内旋筋力が低下している
・骨盤-股関節の連動がうまくいっていない
・骨盤が後傾している
・骨盤を前傾位にできない
・胸椎、腰椎が後弯している
・脊柱を伸展できない

膝関節が内反してしまうのはなぜか?

・外側に過剰に荷重している
・内旋、内転筋力が低下している
・前方への推進力が低下しており、外側に流れてしまう
・股関節の内旋制限
・下腿の過外旋

足関節が回内してしまうのはなぜか?

・膝関節が内反することで、下腿が外側傾斜している
・回外筋力の低下
・回外制限がある

挙げるとまだまだありますが、ざっくり挙げるとこんなところでしょうか。

上記の例から全体像を捉えると、以下のように考えられます。

・脊柱が後弯、骨盤が後傾しており、股関節が連鎖して外旋位
・身体後外側の筋群が硬く制限があり、内側筋群は弱化している、または、筋出力が低下している
・足部内側アーチが潰れている

・歩行時は前額面上の動きが優位で水平面、矢状面上の動きが少ない

変形性膝関節症の方というと、内反変形が特徴的ですが、全体を俯瞰して見ると上記のような特徴が多いです。
「あー、こんな方よくいる!」と思った方も多いのではないでしょうか?

そもそも、このようなアライメントが崩れた状態では筋力を発揮したくてもできない状態です。

つまり、筋力が発揮しやすい身体環境で筋力トレーニングを指導することが重要なのです。

下肢におけるインナーマッスルが働いている状態とは?

では、上記のトレーニングする条件が揃っていない状態と比べて、インナーマッスルが効いている状態、つまり条件が揃っている状態とはどのような状態か考えてみます。

簡単に言うと、先ほどの例と反対の動きができればいいわけですよね。

・脊柱、骨盤に制限が偏った制限がない
・脊柱、骨盤、股関節がそれぞれ分離して動くことができる
・股関節の内外旋に制限がない
・足部内側アーチは保たれている

・それぞれの筋力が十分に発揮できる状態である

難しく考えずに上記のポイントに絞って考えてみましょう!

以下に具体的にみるべきポイントをまとめてあります。

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脊柱・骨盤に偏った制限がないか

下肢に限ったことではありませんが、脊柱、骨盤から構成される体幹が十分な可動性も持つことで、四肢の関節に過度な負担がかからなくなります。

逆に言えば、体幹に制限があると本来よりも四肢が過度に動かなくてはいけなくなり、負担が大きくなった結果、四肢の制限や筋出力の低下につながります。

1つのポイントとして、腰椎の制限がないかどうかを見てください。

股関節では内旋制限が問題となりやすいですが、腰椎が後弯すると骨盤から股関節へ連鎖し、外旋位となりやすいです。
腰椎はスタビリティとモビリティがバランス良く働く必要のある部位なので、可動性が十分にあるかどうかチェックしておきましょう。

腰椎は胸椎と比べて屈伸に特化した形状をしているため、屈伸の可動性をチェックします。
以下のポイントをチェックしてみてください。

・腹部の筋群に柔軟性があるか
(腹直筋、腹斜筋群、横隔膜、大腰筋)
・背筋群に柔軟性があるか
(脊柱起立筋、広背筋、腰方形筋)

腰椎について詳しくは以下の記事に記載してあります。

脊柱・骨盤・股関節がそれぞれ分離して動くことができるかどうか

第10肋骨-ASIS(上前腸骨棘)-恥骨結合の3点が前額面上で同じ高さになるように姿勢を整えた状態(体幹のニュートラルポジション)で以下のポイントに着目して評価してみてください。

・上部体幹(胸郭)を固定した状態で骨盤の前後傾が可能かどうか
・ニュートラルポジションを保った状態で股関節屈曲が可能かどうか

それぞれが分離して動けることで一か所に負担が集中することなく、負担を分散しながら動作をおこなうことができます。

中でも腰椎-骨盤-股関節にまたがって走行している大腰筋の機能が働いているかどうかが非常に重要となります。

以下のポイントをチェックしてみてください。

・腹部の筋群に柔軟性があるか
(腹直筋、腹斜筋群、横隔膜、大腰筋)
・背筋群に柔軟性があるか
(脊柱起立筋、広背筋、腰方形筋)
・大腿前面の筋群に柔軟性があるか
(大腿直筋、大腰筋、腸骨筋、長内転筋)
・大腿後面の筋群に柔軟性があるか
(大殿筋、中殿筋、大腿筋膜張筋、ハムストリングス、大内転筋)

大腰筋に関して以下の記事に詳しくまとめてあります。

股関節の内外旋に制限がないか

腰椎から骨盤にかけての可動性も重要ですが、純粋に股関節自体に制限がないことも重要なポイントの一つです。

特に内旋可動域がポイントであり、立位では股関節内旋-脛骨外旋の連鎖が起こることで膝関節が完全伸展することができ、立位が安定します。

そもそも、この立位の時点で不安定な状態、アライメントが崩れた状態であると、その後の動作においても不安定である、局所に負担が集中してしまうことが考えられます。

ポイントは上述したように大腰筋が重要なので、大腰筋が機能できる環境かどうかという視点で考えると分かりやすいです。
以下のポイントをチェックしてみてください。

・大腿前面の筋群に柔軟性があるか
(大腿直筋、大腰筋、腸骨筋、長内転筋)
・大腿後面の筋群に柔軟性があるか
(大殿筋、中殿筋、大腿筋膜張筋、ハムストリングス、大内転筋)

インナーマッスルである大腰筋に対して、アウターマッスルが過剰に収縮していては大腰筋が機能しにくくなります。

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下肢における筋力トレーニング指導のポイント

上記のポイントを評価してアプローチするだけで筋出力の発揮には変化が出ているはずです。

この状態で筋力トレーニングをすることで効率よくトレーニングの効果を得ることができ、さらに、ある2つのポイントを意識して指導してほしいのです。

そのポイントとは、「みぞおち」「鼠径部」です。

みぞおち

まず、みぞおちは解剖学的に言うと胸腰椎移行部のTh11~L1辺りに位置しており、大腰筋の起始部と一致します。
大腰筋の重要性に関しては散々お伝えしてきましたね。

人は基本的に体の前で手を操作して作業することがほとんどですので、どうしても体幹が屈曲傾向にあり、みぞおちが硬くなりやすいです。
体幹の伸展制限が起きやすいということですね。
具体的には、腹直筋・横隔膜・大腰筋などが制限因子となります。

みぞおちの柔軟性が十分にあると、大腰筋をはじめとするインナーマッスルの機能が十分に働かせることができます。

また、みぞおちが硬くなると体幹伸展に制限が出るため、局所に負担がかかりやすく、特に胸腰椎移行部での負担が大きくなります。
みぞおちを介して下部体幹から上部体幹へ運動が連鎖するため、うまく負担を全身に分散できなくなるんですね。

歩行においても、みぞおちを中心に見てみることも良いですね。
下肢からの運動がみぞおちより上部に伝わっているか、上肢の腕の振りが胸椎からみぞおちを介して下部に伝わっているか。
一つの指標として見てみてください。

下肢の筋力トレーニングの際で言うと、以下のポイントをチェックしながら指導してみてください。

・みぞおちが過度に丸まっていたり伸張していない。
・適度に丸めた状態を保ちつつ運動ができるかどうか。

鼠径部

鼠径部は解剖学的に言うと、大腿骨小転子の部分にあたります。
みぞおちが大腰筋の起始なのに対し、小転子は停止部にあたります。

つまり、小転子を支点に動くことができると大腰筋が働きやすい状態で動くことができます。

例えば、大転子が支点となって動く場合。
荷重は外側寄りになっているので、中殿筋や大腿筋膜張筋など外側の筋群が働きやすいということはイメージできますよね。
外側の筋群が活性化していると、内側の大腰筋や内転筋は拮抗筋にあたるため、働きにくくなるということが言えます。

また、外側に荷重することで大腿骨の頸部があることを考えると、臼蓋から骨頭が逸脱する方向に力が加わってしまうので、それを補うために腰椎や骨盤で代償したり、股関節の肢位を変えて適応します。

多いのが、動作時に膝関節を支点に動く場合。

膝関節は構造的に矢状面の動きにしか可動性がほぼないので、水平面や前額面上の動きが加わると簡単に壊れてしまいます。

下肢の筋力トレーニングにおいても以下のポイントをチェックしながら指導してみてください。

・膝関節を支点にして動いていないか(膝関節の過屈曲、過伸展が伴っていないか)
・鼠径部(小転子)を支点に動くことができているか
 →鼠径部を触れてもらいながら運動すると股関節の支点ができやすいです。

まとめ

・下肢は脊柱、骨盤の影響を大きく受ける

・どこか一部分に偏った制限がなく、それぞれが分離して動くことができることが理想

・脊柱、骨盤、股関節のそれぞれに影響する因子として大腰筋が重要

・みぞおちと鼠径部がポイント

おわりに

いかがでしたか?

闇雲にトレーニングを指導するのではなく、まず筋力トレーニングできる状態か、どこを意識するのか。

これを考えるかどうかで効果が全然違いますのでぜひお試しください!

最後までお読みいただきありがとうございました!

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