TKA術後による膝への影響を考えていますか?

 

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松井 洸
ロック好きな理学療法士。北陸でリハビリ業界を盛り上げようと奮闘中。セラピスト、一般の方へ向けてカラダの知識を発信中。
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僕の知り合いは、バリバリ走り込んで、筋トレもがっつりしてて、フルマラソンは3時間前半で走るくらいスポーツマンなのですが、地域のドッジボール大会でアキレス腱断裂してしまったようで、現在僕がリハビリ中です。笑

アキレス腱断裂の患者さんはあまり来ないのですが、これだけバリバリスポーツする方でも割と簡単に断裂してしまうのだなーとびっくりでした。

話を聞くと、最近は走り込む距離を増やし、筋トレも負荷を強めて、今思えば体のバランスが悪くなっていたかもとおっしゃっていました。
僕も知り合いほどではないですが、走ったり筋トレしたりする中で、走りやすい日や走りにくい日があります。

普段は患者さんの体のバランスを整える側なので、自分の体の変化にも気を使っていかなくちゃなーと改めて思いました。

さて、今回は変形性膝関節症に対するTKAの手術に関する内容です。

TKAって臨床でも多いけど、実際どんな手術なのか知らない方も少なくないです。
実際僕も最初はよく知らずにリハビリしていました。

変形性関節症は、日頃の体のアンバランスが膝へ負担をかけた結果です。
ですが、手術しているので、手術に関する知識を持った上で、膝へかかる負担を取り除くにはどうしていったら良いか?という視点を持つ必要があります。

 

TKA術について

そもそも、TKAとは全人工膝関節置換術(Total Knee Arthroplasty:TKA)のことで、膝OAや関節リウマチによって変形した膝を金属やセラミック、ポリエチレンなどに入れ替えることで、膝のアライメントを整えて痛みや可動域制限を改善するというものです。

切開する方法はいくつかあり、内側から切る方法と外側から切る方法があります。

・medial parapatellar approach
・midline approach
・midvastus approach
・subvastus approach
・lateral approach

lateral approachのみが外側から切る方法で、他の4つは内側から切る方法です。

最も一般的な方法とされるのが、medial parapatellar approachとされ、内側から切る最も展開が容易な方法だとされています。(参考文献①)

 

medial parapatellar approach

・内側広筋の筋腱移行部で切開
・大腿四頭筋の内側1/3を縦割

 

midline approach

大腿四頭筋の内側1/3を縦割

 

midvastus approach

膝蓋骨内側、内側広筋付着部を展開

 

subvastus approach

膝蓋骨内側から内側広筋を切らないように展開

 

lateral approach

膝蓋骨上外側から膝蓋骨前面、膝蓋靭帯、内側関節包を広く展開

今回は最も一般的なmedial parapatellar approachについて解説します。

 

medial parapatellar approachのポイント

膝蓋骨の内側で大腿四頭筋腱と内側広筋を引き剥がすように切開。
下方へ進み、膝蓋骨内側、膝蓋腱内側、内側の膝蓋下脂肪体を切開。
膝蓋骨を内側から反転させ、外側膝蓋大腿靭帯を切離し、膝関節をあらわにする。

これであらわになった膝関節を人工のものに入れ替えるわけです。

この方法によって切っている組織は以下の通りです。

・大腿遠位内側、下腿近位内側の皮膚
・大腿四頭筋腱
・内側広筋
・膝蓋下脂肪体
・外側膝蓋大腿靭帯

当然、切っている組織は手術による影響を強く受けるため、筋肉なら筋出力の低下、皮膚なら関節運動に伴う可動性低下を起こします。
痛みはどの組織でも起こしうる可能性があります。

なので、切った組織の影響は当然考慮してリハビリを進める必要があるということです。

 

組織の治癒過程

各組織、治癒する期間は異なります。
治癒する期間は以下の通りです。

皮膚:2週間で瘢痕形成
腱:6週で概ね回復
筋:2週で正常な筋繊維に
骨:4〜6週で骨折端に仮骨形成

この期間を考慮せずに組織へ過剰なストレスを加えると、組織損傷による痛みに加えて、二次的な痛みを起こす可能性があります。

例えば、内側広筋を切っているのに、早期から強い筋収縮を求めるような運動は大腿四頭筋腱と内側広筋間に剪断力が生じ、切開部が離れるようなストレスが加わる可能性があります。

また、膝関節屈曲時は大腿骨長軸に沿って縦に皮膚が伸びますが、大腿四頭筋は横方向にも伸びるため、それに伴い皮膚も横方向にも伸びます。
皮膚は膝蓋骨内側から縦に切っているため、横方向への動きは切った皮膚を引き離すようにストレスが加わります。

このように、切った部分が離れるような動きをセラピストが行うと、痛みを作り出している可能性があるわけです。

上記の治癒過程を考慮し、皮膚や筋なら2週間は過剰なストレスを加えないような配慮が必要です。
例えば、皮膚が離れる方向とは逆に縮む方向へ誘導し、皮膚が離開するストレスを少しでも和らげた状態で膝関節を動かすなど。

治癒期間を過ぎた後は、痛みに応じて積極的に組織の可動性を出していくことが求められます。

切開した組織へのストレスがかからないようにと考え過ぎて何もしないと、それはそれで組織間で癒着が生じてしまうため、可動域制限の原因になります。

 

癒着するポイント

手術による切開でなるべく癒着が生じないようにし、治癒期間が過ぎた後は癒着が生じたポイントの制限を解消し、膝関節の機能を再建していくことが求められます。

癒着が生じやすい部位は以下の通りです。

・大腿直筋-内側広筋
・内側広筋-中間広筋
・膝蓋腱-膝蓋下脂肪体
・外側広筋-外側膝蓋大腿靭帯

これらの癒着を予防、剥がしていくための戦略をご紹介します。

まず、広筋群に対してのアプローチ。

パテラセッティングのやり方を工夫することで、効果的なアプローチになります。

1.ベッド上で健側を下へ降ろし、患側膝を伸展位で伸ばす
2.骨盤は後傾しないように正中位を保持
3.セラピストは大腿四頭筋腱を近位へ軽く押圧しつつ誘導
4.股関節内転位、外転位それぞれでパテラセッティングを行う

股関節外転位では、大内転筋と連結している内側広筋も伸張するため、より優位に内側広筋が働きます。
股関節内転位では、腸脛靭帯と連結している外側広筋も伸張するため、より優位に外側広筋が働きます。

大腿四頭筋腱を押圧して近位へ誘導するのは、Ⅰb抑制を利用して大腿直筋を緩め、広筋群を優位に働かせるためです。
さらに、骨盤を後傾位にしないことで、大腿直筋をより短縮位で保持でき、広筋群が優位に働きます。

これによって、各組織との滑走性を促すことができるため、癒着の予防や解消に効果的です。

 

まとめ

・TKAの方法は全部で5つある
・最も一般的なのはmedial parapatellar approachという方法
・切開した組織は当然侵襲による影響を受け、筋出力低下、可動域制限、痛みの原因となる
・組織の治癒過程を考えないと、侵襲による痛みに加えて二次的な痛みを作る可能性がある
・治癒過程が過ぎたら、積極的に癒着を解消、膝機能を再建する

TKAによって切られる組織と切られない組織が分かったでしょうか?

切った組織をしっかり認識し、そこが制限されるのは前提として、どのようにリハビリを進めていくべきなのかを考えましょう。

 

参考文献

1.OS NOW 人工膝関節置換術

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