リハ塾~臨床の教科書 下肢編~股・膝・足関節まとめ

目次

・股関節ってそもそもどんな関節?
・股関節におけるゴール設定
・股関節の治療戦略
・股関節周囲に対する筋間リリース
・股関節に対する関節可動域運動
・股関節の運動療法
・膝関節ってそもそもどんな関節?
・膝関節におけるゴール設定
・膝関節の治療戦略
・膝関節周囲に対する筋間リリース
・膝関節に対する関節可動域運動
・膝関節の運動療法
・足関節ってそもそもどんな関節?
・足関節におけるゴール設定
・足関節周囲に対する筋間リリース

股関節ってそもそもどんな関節?

大腿骨頸部骨折や変形性股関節症など股関節の疾患を担当する機会は他の疾患と比べても多いのではないでしょうか?

それだけ多く関わる可能性のある股関節。

そもそも股関節がどんな関節なのか?
どんな特徴を持つ関節なのか?

これを理解しないままリハビリすると結局なんとなく筋トレやROMex、歩行練習などおこない、すぐに退院となってしまいます。

良くなれば良し、あまり良くならなかったり痛みが残っても「時間が経てば良くなってきますよ。」、「他の人もそんなもんですよ。」など言っていませんか?

実際、新人時代の私がそうでした。
今思えば本当に申し訳ないことをしていたと思う反面、同じように新人や若手セラピストの中でも同じように考えている方は多いはずと感じています。

おさえておくべきは主に以下の4つ。

・下肢と体幹を連結する関節
・股関節の構造的特性
・前方と外側に不安定な関節
・後方筋群の密度が高い

下肢と体幹を連結する関節

見た通りですが、体幹と下肢を繋いでいる関節になります。

そのため、隣接している骨盤(仙腸関節)、腰椎との関係が深く、
股関節→骨盤・腰椎、骨盤・腰椎→股関節への双方向の影響を考慮する必要があります。

股関節を評価する上で骨盤↔腰椎↔股関節の関係性を頭に入れて考えないといけないわけです。
股関節に障害がある場合、上記のどこで関係が崩れているかを評価する必要があります。

歩行時、体幹と股関節がうまく連動できている場合は体幹:股関節=50:50の力が必要だとする。
対して、連動が不十分な場合、体幹:股関節=30:70と足りない分を股関節で過剰に力を発揮して代償することが考えられます。

このような状態で歩行をはじめとする下肢筋力が求められる動作において、股関節へ過剰な負担となるため、オーバーユースによる炎症や痛みが起こる可能性があります。

つまり、股関節における痛みというのは、体幹との関係性が崩れた結果、足りない筋力、可動域を代償して過剰に負担がかかっている状態と言い換えることができます。

股関節における障害というのは、以下のようなものと覚えましょう。

・股関節↔骨盤↔腰椎のどこかで連動が阻害されている
・どこかを代償した結果、股関節に過剰な負担がかかっている

股関節の構造的な特性

股関節は寛骨の関節窩と大腿骨頭から形成される球関節。
3軸性なので屈曲/伸展、外転/内転、外旋/内旋と比較的高い自由度を有しています。

しかし、大きな可動性を持っている反面、構造的に不安定な面もあります。

場面に応じて可動性を発揮したり、安定性を発揮したりと柔軟性と剛性、二つの要素を使い分けられることが理想です。

関節はそれぞれ交互にモビリティとスタビリティの関節が位置している関係にあります。

股関節はモビリティの役割を担いますが、臨床上、モビリティとスタビリティの関係性が逆転していることが多い。

骨頭が関節窩に対して求心位を適切に保つことができるからモビリティとして働くことができ、求心位を保つことができないと安定性を求めてより骨頭の被覆率が高い骨盤前傾位へ肢位を変えたり、筋肉で固めたりしてより適合性が高くなるようにします。

その結果、股関節がスタビリティとして働くようになり、そこに本来のモビリティとしての働きが求められると痛みの原因としてなることがあるのです。

硬いからほぐすという考え方ではなく、まずはなんでそうなるの?と疑問をもって考えてみると良いと思います。

臨床上多いのが、モビリティ関節の胸椎の制限によって腰椎が過可動性を要求される→過可動性を抑制するために筋肉で固める→体幹が機能低下し、股関節にスタビリティとモビリティの両方が要求される→殿筋群が硬くなり骨頭は前方偏位、腸腰筋も骨頭を抑えるために硬くなる→股関節の機能低下、疼痛

この流れが多いです。

・可動性が低い=ストレッチ、マッサージではなく、可動域制限を起こす原因が隠れていると疑う
・全身として見て、モビリティとスタビリティの関係は逆転していないか

まず、この視点で評価してみてください。

前方・外側に不安定な構造

臼蓋は骨頭の2/3を覆っていて、内側、後方、上方を覆っています。
 
骨頭の前方、外側は臼蓋が覆っていないのでその方向は必然的に構造的に不安定となります。
関節運動でいうと、伸展と内転ですね。
 
その不安定さを補っているものが関節包や靭帯などの静的な安定性に関わる組織、動的な安定性に関わる筋肉です。

<静的な安定性に関わる組織>
・関節包
・関節唇
・靭帯
 関節包内靭帯:大腿骨頭靭帯、寛骨臼横靭帯、輪帯
 関節包外靭帯:腸骨大腿靭帯、恥骨大腿靭帯、坐骨大腿靭帯
 *腸骨大腿靭帯、恥骨大腿靭帯が前方の安定性に関わる靭帯です。
 
<動的な安定性に関わる組織>
 ・腸骨筋
・大腰筋

両者を合わせた「腸腰筋」が前方の動的な安定性に関わっています。

腸腰筋は骨頭を臼蓋に対して求心位に保つ働きをしており、股関節においては最重要と言ってもいいくらい大事な筋肉です!

・伸展、内転に制限があるといって安易にストレッチすると危ないケースもある
・不安定さを補うために緊張を高めているのであって、不安定さを起こしている原因が背景にあると疑う

後方筋群の密度が高い

股関節周囲筋を見ると、前方の筋群に比べて後方の筋群が多く、密度が高いです。
ということは、後方筋群の柔軟性の低下により骨頭の前方偏位が助長されやすいということです。

骨頭の前方への不安定さと後方筋群の柔軟性低下と合わさると容易に前方へ偏位してしまいます。

腸腰筋は股関節におけるインナーマッスルで機能不全をおこしている場合、アウターマッスルの緊張を高めて関節の安定性を得ようとするため、可動性は低下してしまいます。

このことから、関節構造的にも筋肉の配置的にも骨頭が前方へ偏位しやすく、それに伴って腸腰筋が緊張を高めて対応する戦略となりやすく、可動性が低下、モビリティとしての役割も失われてしまうということが考えられます。

このような股関節としての前提を理解した上で評価すると評価・アプローチもスムーズに進めることができるかと思います。

股関節におけるゴール設定

ここまでの股関節とはそもそもどういった関節なのか理解できたら、ゴール設定を明確にしておく必要があります。

ここでいうゴールとは、股関節の理想の状態を考えて現在の状態と比較して何が足りないのか?差を考えることで、すべき評価・アプローチもおのずと出てくると思います。

理想の股関節の状態を明確に

現在の股関節の状態との比較

理想と現在の差を埋めるための評価・アプローチ

このような流れですね!

結論から言うと以下の2点が重要。

・股関節、骨盤、腰椎それぞれに制限がない
・腸腰筋に機能不全がない

股関節・骨盤・腰椎にそれぞれ制限がないこと

理想は、股関節・骨盤・腰椎がそれぞれが連動して効率よく筋力が発揮できる状態。

連動するということをもう少し掘り下げると、関節運動に合わせてそれぞれの骨が動き、関節面の向きを変化することができなければいけません。

どういうことかと言うと、歩行時の立脚後期では股関節は伸展し骨頭は前方へ動きますが、この時に寛骨が前傾することで骨頭に対して関節面が適合する方向へ向きを変えることができます。

関節の適合性が高い状態を常に作ることができれば、偏った筋肉の使い方となることもなく、バランスが悪くなることなく、効率よく筋力を発揮できます。

可動域制限や痛み、筋力低下は関節の適合性が悪いがために引き起こされているという視点からみると、関節の適合性を阻害している要因を探せばいいわけなので、目的が明確になります。

腸腰筋が過緊張して骨頭を抑え込む必要もないのです。

さらに、寛骨の前傾に合わせて腰椎も伸展することで下肢-体幹の力の伝達がスムーズにいきます。

単純に股関節だけで純粋に屈曲をすると、70°しかありません。
股関節の参考可動域は125°であるため、骨盤と腰椎の可動性も必ず評価しないといけないのです。

基本的には以下のように連動します。

股関節屈曲+骨盤後傾+腰椎後弯
股関節伸展+骨盤前傾+腰椎前弯

この3つのどこかで可動性が低い部分があると、同じ角度、筋力を再現するためにはどこかに過剰に負担がかかることになります。

股関節痛や腰痛、下肢の筋力低下がある場合、上記の流れのどこかで制限がありますので、そこを探してみてください。

腸腰筋に機能不全がない

腸腰筋は腰椎から大腿骨に付着しており、唯一体幹と下肢にまたがっています。
腰椎・骨盤・股関節の連動が重要だと言いましたが、それをコントロールする上で腸腰筋は重要です。

腸腰筋の機能としては以下の3つ。

・骨頭を求心位に保つ
・脊柱を直立位に保つ
・股関節の屈曲、外旋

腸腰筋に機能不全があると、骨頭を求心位に保つことができず、大腿四頭筋や臀筋群などアウターマッスルの緊張を高めて安定性を得ようとします。

腰椎にも付着しているので当然腰部の安定性にも影響があり、脊柱起立筋の緊張も高めます。

こうなると、腰椎-骨盤-股関節の分節性が失われ、一塊のような動きしかできなくなります。

アウターマッスルで固定と動作の両方を担う傾向になってしまうため、無駄に筋肉が肥大しますし、筋力も発揮しずらくなり、ますます動きにくく悪循環に陥ってしまいます。

臨床では股関節の筋力強化として中臀筋のトレーニングなどするかもしれませんが、その前に本当に筋力強化が必要なのか?なんで筋力低下しているのか考えて欲しいのです。

筋力低下=筋力トレーニングではなく、筋力低下を起こしている要因は何か?と考えるということ。

筋トレが患者さんにとって全て良いことばかりではないということを頭に入れておいてください。

股関節の治療戦略

今までの内容をまとめてどのように進めていけば良いのか考えてみます。

腰椎・骨盤・股関節それぞれに適度な可動性があるのか評価

腸腰筋の機能不全がないか評価

各可動性、腸腰筋の機能不全を改善

股関節優位の動作戦略へ

各部位の可動性を十分に引き出し、腸腰筋が適切に機能できる環境を整えて、さらに腸腰筋自体を使えるように徒手療法、運動療法を行っていくという流れです。

股関節周囲筋に対する筋間リリース

術後や特定の筋肉ばかり過剰に使用していると筋肉同士、筋肉と各組織(靭帯、関節包など)が癒着を起こして動きにくくなっていることがしばしばあります。

要は、組織が互いに滑り合わないとスムーズに筋肉は収縮と弛緩ができない。
つまり、可動域制限や筋出力の低下につながります。

私の臨床上、癒着を改善するだけでも劇的に可動域、筋力の改善が認められます。

中殿筋-大殿筋

臀筋群が硬いと骨頭を前方に押し出してしまい、関節の適合性を悪くしてしまう要因の一つになります。

股関節は前方に不安定要素が強い関節でしたね。

中殿筋-大腿筋膜張筋

軟部組織に依存した姿勢や動作になると、外側の大腿筋膜張筋から腸脛靭帯のラインに沿った組織に依存しやすいです。

皆さんも常に直立していると疲れるので外側に体重をかけていたりしませんか?
これが顕著になると組織間で癒着が起こり、偏った動きとなる要因の一つになります。

大殿筋-ハムストリングス

ハムストリングスは股関節筋の中でも重要な筋の一つ。

寛骨を介して腸腰筋と拮抗する関係にあるため、ハムストリングスが癒着で動きにくい状態にあると、腸腰筋の働きも阻害されてしまう。

腸骨筋-大腰筋

両者は一括りに腸腰筋とされていますが、本来は二つの筋肉であるため、それぞれ違う機能をもっています。

腸腰筋が働きやすいように周囲の環境を整えることも重要だが、この二つの筋肉が分離してそれぞれが働けるように整えることも重要。

股関節に対する関節可動域運動

関節可動域運動をおこなう前にそもそもの間違いを理解しておきましょう。

そもそも関節可動域運動自体を間違ったやり方で実施している場合があります。
まず、考えてほしいことがなぜ関節可動域制限が起こっているのかということです。

よくある間違いが、筋肉など軟部組織が固まったから制限が起こっているという誤解。
そうではなく、運動パターンの異常で関節に偏ったストレスがかかった結果、骨の変形や軟部組織が変化し可動域制限が起こるという流れが自然です。
骨折による急性外傷などはまた別ですが。

例えば、股関節で多いのは伸展制限。
腸腰筋や大腿直筋が固いから伸展がいかないと考えて、ストレッチなどによって柔軟性が改善したとしてもすぐに元に戻ることが考えられます。
みなさんも一度はこういった経験あるんじゃないでしょうか?

筋肉の固さ→関節の制限という考えで筋肉の固さがとれたら可動域は改善するといった安易な考えではなく、筋肉が固くなったそもそもの原因があってその結果として可動域制限が出現しているので、その原因に対してアプローチしなければいけないのです。

上記の例で考えられる一つの要因としては、高齢となると脊柱は後湾しそれに伴い、骨盤が後傾して股関節は屈曲・外転・外旋位となりやすいです。

このような姿勢で歩行など動作を行うことが習慣化されると、次第に股関節後方の筋群(大殿筋、中殿筋、梨状筋など)は柔軟性を失い、大腿骨頭は前方へ押し出され、腸腰筋など前方の筋群によって大腿骨頭をおさえるために緊張を高めることが予測されます。
姿勢による運動パターンへの影響の結果として、腸腰筋が緊張しているのでストレッチでは中々改善しないと思われます。

つまり、可動域制限や痛みを改善するために筋肉に対してストレッチするという考えが間違いで、そこに至ってしまった運動パターンの改善が必要なのです。

そのためには、関節の構造に合った運動パターンを再学習、関節の構造に逆らわないハンドリングが重要となります。

股関節の構造理解

関節構造に合ったハンドリングをするにはそもそもの股関節の構造を理解しておく必要があります。

大腿骨の形態

脛体角

前額面上では、大腿骨には大腿骨長軸と頸部から成る頸体角と呼ばれる約125°の角度が存在しています。
これより角度が少ないと内反股、大きいと外反股と呼ばれます。

前捻角

水平面上では、大腿骨頸部が大腿骨内外側顆を通る内外軸に対して10~15°前方に捻れている前捻角と呼ばれる角度が存在しています。
この前捻角が15°より大きくなると過度前捻と呼ばれ、少なくなると後捻と呼ばれます。

大腿骨形状から考える股関節の安定性

125°の脛体角と15°の前捻角から屈伸・回旋0°であれば、骨頭は前上方内側に向いていることになります。
大腿骨がこのポジションで固定されている場合、臼蓋を後下方へ向けると骨頭にうまくはまります。

つまり、大腿骨に対して骨盤前傾位が骨頭を臼蓋が覆う被覆率が高まり、安定性が高いポジションと言えます。
反対に骨盤後傾であると、臼蓋は前方へ向くため前方の被覆率はより低下してしまい、不安定なポジションと言えます。

・骨盤前傾→股関節安定性↑
・骨盤後傾→股関節安定性↓

このように覚えましょう。

変形性股関節症や臼蓋形成不全などの症例では、元々臼蓋が浅く骨性支持が得られにくかったり、筋による制御も不十分であるため、骨盤を前傾位で固定して被覆率を高めたポジションで歩行や動作を行う場面をよく見かけます。

これは、不安定な関節をどうしたら安定できるか?となった結果として骨盤前傾という対応をしています。
ですので、前傾が強すぎる!と安易に後傾方向へ誘導したり、前傾へ引っ張っている筋を緩めたりすると、痛みを増強させたりうまく歩行できないといったことになる可能性があります。

重要なのは、なぜ骨盤前傾という戦略をとる必要があるのか?という視点。

腸腰筋が機能していれば骨頭は求心位に保持でき、骨盤の前傾による股関節の安定化を図る必要ない。
腸腰筋は機能低下を起こして短縮することが多い。
なぜ、腸腰筋が機能低下しているか考えるとアプローチ方法も明確になってきます。
腸腰筋が関与する関節や拮抗筋との関係性など、様々な要因がありますがそれを一つ一つ検証していくのです。

寛骨の形態

CE角

前額面上で臼蓋の大腿骨頭を覆う程度を表しているCE角と呼ばれるものがあります。
これは、前額面上で骨頭中心に対する垂線と骨頭中心と臼蓋上縁を結んだ線とのなす角度のことを指し、正常では約35°です。
この角度が少なくなる、より垂直に近づくと骨頭に対する臼蓋の被覆率は低くなり、脱臼のリスクが高まると言えます。

骨盤の動きで言うと、前傾することで前額面上では坐骨結節が開くように動くため臼蓋上縁は内側へ動き、CE角は減少します。

脱臼リスクが高まるというと、じゃあ骨盤前傾はしないほうがいいのか?というと違って、ケースバイケースです。
あくまでも前額面上で上方への脱臼リスクが高くなるということで、逆にいうと下方の被覆率は高くなっているのでそこに骨頭の向きを変えればいいわけです。

この場合でいうと、外転方向へ骨頭が動くと骨頭は下方へ向くので関節の適合性が高まります。
しかし、実際は3Dで動くので一概に外転したらいいというわけでもないです。

この場合も大事なのは、どのように骨盤が偏位しているという現象ではなく、なぜそのように偏位する必要があるのか?どういった理由があるのかというところです。

寛骨臼前傾角

水平面で臼蓋が骨頭を囲む角度である寛骨臼前傾角と呼ばれるものが存在しています。
骨頭の前後を結ぶ線と寛骨臼の後縁と前縁を結んだ線からなる角度で、これは20°が正常であり、骨頭の前方は臼蓋で覆われてはいません。
ですので、構造上骨頭は前方に脱臼しやすく、後方は安定性が高い構造となっています。

骨盤が固定した状態で大腿骨を動かす場合、内旋すると骨頭は後方へ向くため関節適合性が高まると言えます。

寛骨形状から考える股関節の安定性

35°のCE角と20°の寛骨臼前傾角から前後傾・回旋・側方傾斜が0°であれば、臼蓋は前下方外側へ向いていることになります。
寛骨がこのポジションで固定されている場合、大腿骨は屈曲・外転・外旋または伸展・外転・内旋すると臼蓋に向けて骨頭を動かすことができます。

つまり、寛骨に対して大腿骨が屈曲・外転・外旋または伸展・外転・内旋したポジションが被覆率が高まり、安定性が高いポジションと言えます。

以下のように覚えましょう。

・大腿骨屈曲・外転・外旋または伸展・外転・内旋→安定性↑
・大腿骨屈曲・内転・内旋または伸展・内転・外旋→安定性↓

このように覚えましょう。
あくまでも、骨盤が動かず大腿骨が動く場合ですが。

関節適合性を考えて股関節運動

大腿骨と寛骨はそれぞれ形状の特徴があって、形状に合った関節の適合性が高まるポジションがあることが分かりましたね。

そう考えると、可動域制限や痛みなどの症状が出現するのは、大腿骨と臼蓋との適合性が崩れている、適合性が低いポジションへ動いてしまうような運動パターンとなっていると言えます。

冒頭でも述べましたが、よくある誤解が体幹に対して真っ直ぐ屈伸するという認識。
上記で挙げたような形態を考えると真っ直ぐ屈伸すると骨頭が臼蓋から外れる方向へ動くため、脱臼・インピンジメントしてしまいます。

こうならないためには、臼蓋に対してはまるように骨頭の向きを調整しなければいけません。

頸部がなければ真っ直ぐ屈伸することもあるかもしれませんが、125°の角度をもった頸部がついていることを考慮すると、頸部の軸に合わせた関節運動をすることが自然ですよね。

頸部の運動軸に沿った関節運動に対して抵抗する組織があると骨頭が関節窩からズレてしまいますので、関節面からズレない自然な関節の動きの理解が必要なのです。

屈曲時

屈曲時の場合で考えると、脛体角があるので真っ直ぐではなく、頸部の長軸にそって軸回旋するように外側に向けて屈曲する必要があります。
屈曲に伴って骨頭は後方へ移動、外側へ屈曲する(外転方向)と骨頭は下方へ移動します。
このままだと、下後方へ脱臼してしまうので外旋して骨頭を前方へ向けます。
臼蓋は寛骨臼前傾角もあり、前方に比べ後方の方が深くなっているため、後方へ向くようにすると適合性が得られるというわけです。

つまり、骨頭が臼蓋から逸脱しないように屈曲するには、屈曲・外転・外旋の複合運動が必要なのです。
セラピストによるROMexにおいてもこの複合的な動きを意識して動かすべきです。

また、立位では先ほどと反対に骨頭に対して臼蓋の向きを変えなければいけません。
つまり、体幹、骨盤の抗重力位での操作能力が求められます。

屈曲時の骨頭向きは、前内方へ向くため臼蓋は後外方へ向きを変える必要があります。
言い換えると、骨盤後傾です。

屈曲時では、まずは臼蓋が前方を覆っていないという特徴をふまえて、少し屈曲方向へ動かすと骨頭は下方へ移動して被覆率が高まりますので、ここから脛体角を意識した対角線上に動かすと良いです。

1.やや屈曲位へ大腿骨を誘導
2.屈曲位からやや外転・外旋位へ誘導
3.2のポジションから脛体角の軸回旋を意識して上外側へ誘導する
(この時、屈曲・外転・外旋の複合運動しながら)

上記の流れに加えて、膝関節を屈曲位にすること、骨盤を後傾位にすることも行うとより良いです。
膝関節が屈曲位であると、大腿骨は遠位が上方へ近位が下方へ移動、つまり、相対的に股関節は屈曲方向へ動くことになるので、これを利用します。

骨盤は大腿骨の操作と一緒に行うことは難しいので、クッションやタオルを臀部下方へ入れて後傾位とすると良いです。

伸展時

伸展時の場合も同様に脛体角を考慮して、頸部の長軸にそって軸回転するように動く必要があります。
屈曲時は外側に向けてでしたので、真っ直ぐではなくそのライン上に合わせて内側へ向けて伸展します。

伸展位から屈曲位へは内側から外側へ斜めに動くことになりますね。

伸展時は骨頭が前方へ向くため、内旋・内転によって骨頭を後上方へ向けると臼蓋の適合性が高まることになります。

つまり、骨頭が臼蓋から逸脱しないように伸展するには、伸展・内転・内旋の複合運動が必要なのです。
ROMexにおいてもこのような複合的な動きを意識するべきです。

また、立位では骨頭に対して臼蓋の向きを変えなければいけず、伸展時の骨頭は後内方へ向くため臼蓋は前外方へ向きを変える必要があります。
言い換えると、骨盤前傾です。

伸展時では、まずは屈曲時と同様に臼蓋の前方が覆われていないことをふまえて、内旋方向へ動かすと骨頭が後方へ移動して被覆率が高まりますので、ここから脛体角を意識して対角線上に動かすと良いです。

1.やや内旋位へ大腿骨を誘導
2.内旋位から伸展・内転位へ誘導
3.2のポジションから脛体角の軸回旋を意識して下内側へ誘導する
(この時、伸展・内転・内旋の複合運動しながら)

上記の流れに加えて、膝関節を伸展位にすること、骨盤を前傾位にするとより良いです。
膝関節が伸展位であると、大腿骨は遠位が下方へ近位が上方へ移動、つまり、相対的に股関節は伸展方向へ動くことになるので、これを利用します。

骨盤は下位腰椎あたりにタオルなど入れて対応すると良いです。

 

まとめると以下のようになります。

・股関節屈曲=大腿骨屈曲・外転・外旋+寛骨後傾
・股関節伸展=大腿骨伸展・内転・内旋+寛骨前傾

股関節の運動療法

さて、可動域を阻害する組織をリリースして関節可動域運動で可動域も十分に引き出したらそれで終いではありません。

獲得した可動域を十分に活かせるように運動療法を取り入れることが重要です。

可動域が拡大したら満足してしまいがちですが、ここが一番重要なポイント。
骨折などの外傷以外はその方の動作パターンによってなるべくしてなった制限や筋出力低下、痛みなどの症状です。

動作まで変えて再び症状が出ないようにしなければいけません。

運動療法①

1.端座位にて鼠径部を触れる
2.体幹を前屈する

<ポイント>
・腰椎は伸展位を保ったままおこなう
・骨盤の前傾を意識する

股関節は腰椎、骨盤とセットで動く必要があるので、股関節に対する腰椎、骨盤の動きを目的としています。

運動療法②

1.背臥位にて片膝を立てて反対側の下腿を膝の上に乗せる
2.乗せた下腿を股関節屈曲・外旋方向へ動かす

<ポイント>
・ゆっくりと可動範囲を動かし大腰筋を働かせる

股関節においては大腰筋が最も重要。
大腰筋の特徴をふまえてゆっくり動かしてあげることが大事。

運動療法③

1.立位で肩幅に足を開く
2.鼠径部を触れつつ体幹を前屈し、臀部を後方へ突き出す

<ポイント>
・膝が足部より前方へ出ないように注意
・膝は過伸展しないように注意

ハムストリングスの遠心性収縮意識しておこないます。
ハムストリングスと大腰筋は寛骨を介して拮抗関係にあるので、ハムストリングスの収縮を入れることで大腰筋も働きやすくなります。

 

膝関節ってそもそもどんな関節?

膝関節も股関節と同じく、臨床で担当することがとても多い関節。

大腿骨頸部骨折、圧迫骨折と並んで変形性膝関節症はかなり多いんじゃないでしょうか。

膝関節も必ず見ることのある関節なのでもれなく理解しておきましょう。

股関節と足関節の間に位置する

見たまんま、股関節と足関節の中間にある関節。

つまり、上からも下からも影響を受けやすい部位ということ。

足関節に過剰なストレスがかかれば、ストレスを軽減するために膝関節で代償しますし、股関節においても同様のことが言えます。

臨床で多いのは、股関節の可動性が低下しているために膝の筋肉を過剰に使っているケース。
その結果、膝関節自体の可動性も低下してしまっているケースが多いです。

他の部位を代償した結果として膝関節に二次的にストレスがかかっているということですね。

変形性膝関節症もそうですが、直接的な外傷ではないので慢性的にストレスにさらされた結果、それに対応するために膝自体の構造が変形し、内側裂隙が狭小する。
それによって痛みが出てしまう。

臨床では、このようになんで痛いのか?なんで可動域制限があるのか?その背景にある要素をどんどん掘り下げていくべきですし、その方が改善も早いし症状の戻りも少ない。

このことからも、臨床では膝ばかりに目を向けていても中々改善が認められない場合がとても多いなと感じます。

膝関節の構造的な特性

1軸性の螺旋関節であるため屈曲・伸展の動きがほとんどで回旋の動きがわずかにしかありません。

ご存知、Screw home movementと呼ばれる、膝関節最終伸展30°で見られる脛骨の外旋運動があり、これも膝関節の動きにはとても重要です。

要はこれ以上に回旋の動きが膝関節に要求されると、構造的に破綻してしまうということです。

上下に位置する股関節も足関節も関節構造的には自由度の高い3軸性の関節。

両者の関節に回旋制限が存在すると、膝関節で足りない回旋の角度を代償してしてしまい本来膝が持っているキャパシティ以上の回旋ストレスがかかり、壊れてしまうというわけです。

本来、回旋可動域はほとんどないに等しいので壊れてしまうのも無理ないですよね。

当たり前のことですが、新人の頃の私にはこの視点がなかった。
この視点を持っているかどうかで膝を見る視点が全く違ってきます。

構造的に不安定

解剖の教科書やアプリで膝周囲の筋肉を見るとすぐ分かりますが、股関節と比べると圧倒的に筋肉の密度が少ない。

膝前面は大腿四頭筋、膝後面は膝窩筋と腓腹筋、ヒラメ筋のみ。
股関節は倍以上の筋肉が周囲を覆っていますよね。

筋肉は動きを作るだけでなく、保護的な役割も持っているわけです。

じゃあ膝関節を守る組織はなにか?というと靭帯が守ってくれています。

<関節内靭帯>
・前十字靭帯
・後十字靭帯
・膝横靭帯
・後半月大腿靭帯

<関節外靭帯>
・膝蓋靭帯
・内、外側側副靭帯
・内、外側膝支帯
・内、外側膝蓋大腿靭帯
・内、外側膝蓋脛骨靭帯
・腸脛靭帯
・弓状膝窩靭帯
・斜膝窩靭帯

このように膝関節の内外側、前後から強く補強してくれています。

こんなに多くの靭帯が守ってくれているから大丈夫!というわけではなく、靭帯も万能ではありません。

加齢や偏ったアライメント、動作によって少なからず靭帯は緩みます。

適切な緊張があってこそ膝関節を正しい方向へ誘導してくれるのですが、緩んでいるとその役割を果たせません。

ここで重要なのは、ある靭帯が緩んでいる場合、どの筋肉の働きが大事になってくるのかという視点。

靭帯の役割が弱いならそこを補うようにどういった戦略を用いるのがその方にとって良いのか?
ストレステストなどで靭帯を評価したら終わりではなく、ここまで考える事が大事。

膝関節におけるゴール設定

理想の膝関節の状態を明確に

現在の膝関節の状態との比較

理想と現在の差を埋めるための評価・アプローチ

結論から言うと以下の2点が大事。

・膝蓋大腿関節と大腿脛骨関節に制限がない
・大腿四頭筋とハムストリングスのインバランスがない

膝蓋大腿関節と大腿脛骨関節に制限がない

膝関節を細かく見ると、膝蓋大腿関節と大腿脛骨関節の二つに分けられます。

どちらかに制限があっても膝関節としての機能は最大限に活かせません。

膝関節において特に重要なのが、伸展制限がないかどうか。
膝関節は完全伸展してはじめて構造的に安定します。

伸展に伴う、膝蓋大腿関節と大腿脛骨関節の動きは十分あるのかどうか必ず評価しておくポイントです。

大腿四頭筋とハムストリングスのインバランスがない

膝関節に問題のある方は大腿四頭筋停止部、ハムストリングス停止部の柔軟性の低さが著明にある場合がとても多い。

この要因として、膝関節の障害は股関節と足関節の代償の結果として二次的に出現している場合がほとんどです。

両関節が動かない部分を膝関節で代償して動きをフォローしている。
つまり、膝関節が優位となって動作を行っています。

そもそも、膝関節が優位に、主体となって動くことってほぼありません。

膝に問題のある方の姿勢や動きを思い浮かべてみてください。

私たち膝に問題のない人が膝を曲げて歩いたり、反対に過伸展させて歩いたりすることってないですよね?
そのように偏った姿勢や動きは必ずどこかに偏ったストレスをかけています。

また、偏ったストレスがかっているがために、膝周囲の筋群を固めて安定性を作り出しているとも考える事ができます。

臨床では、大腿四頭筋の筋力トレーニングとしてパテラセッティングや座位での膝関節伸展運動を実施している場面を多く見ます。

決してはだめではないですが、これをする前に考えてほしいのです。

本当に大腿四頭筋の筋力が必要なのか?

股関節優位で動けているか?

そもそも大腿四頭筋の柔軟性が乏しい状態でトレーニングしても効果が見込めるのか?

などなど、トレーニングそのものが悪ではなく、それを実施するための要素として何が必要なのか、前提条件を考える必要があります。

大腿四頭筋のトレーニングをしている場面をよく見かけますが、それを指導する前に考えて欲しいのです。

・本当に大腿四頭筋を鍛える必要があるのか?
・ただでさえ、固まってしまっている筋肉をトレーニングするとどうなるか?
・柔軟性に乏しい状態でトレーニングして本当に効果が得られるのか?

トレーニングをすること自体が悪いわけではありませんが、上記のような視点で考えた上で指導することが重要です。

膝関節の治療戦略

今までの内容をまとめて、どのように膝関節に対するリハビリを進めていくべきか考えてみます。

膝関節周囲の緊張・癒着を解消して関節の可動性を引き出す

膝関節優位の戦略から股関節優位の戦略へ

考え方は股関節と一緒。
可動性を阻害している組織をリリースしてから関節可動域練習、運動療法で姿勢と動作パターンを変えるという流れ。

膝関節周囲に対する筋間リリース

術後や特定の筋肉ばかり過剰に使用していると筋肉同士、筋肉と各組織(靭帯、関節包など)が癒着を起こして動きにくくなっていることがしばしばあります。

要は、組織が互いに滑り合わないとスムーズに筋肉は収縮と弛緩ができない。
つまり、可動域制限や筋出力の低下につながります。

私の臨床上、癒着を改善するだけでも劇的に可動域、筋力の改善が認められます。

膝関節周囲は股関節ほど組織が多くないのでやること自体はそこまで多くはないので、ちゃちゃっとリリースして運動療法や生活動作の練習に時間を使いましょう。

 

外側広筋-大腿二頭筋

変形性膝関節症の方は内反変形がほとんどですので、多くは外側荷重になっています。

ということは、外側の筋群が常に収縮せざるを得ない状況にあり、筋間の滑りが悪くなりやすく、癒着しやすいポイントになります。

半腱・半膜様筋-大腿二頭筋

両筋はハムストリングスとして一つで考えてしまいがちですが、作用が違うので分けて考えるべき。

停止部から起始部に向かって筋繊維を辿っていくと大腿中央辺りで両筋が交わるポイントがあるので、起始部まで丁寧に両筋を剥がしていきます。

大腿四頭筋-膝蓋上嚢

大腿四頭筋の停止部の直下に膝蓋上嚢があります。
ここで癒着が起こると、膝蓋骨の動きがかなり制限されてしまいますので、チェックしておきましょう。

膝蓋腱-膝蓋下脂肪帯

膝蓋腱の直下に膝蓋下脂肪体があります。
これも同様に膝蓋骨の動きをかなり制限してしまうのでチェックしておくべきです。

膝関節に対する関節可動域運動

股関節同様、なぜ関節可動域制限が起こっているのかという部分を考えていない場合が多いです。

膝関節で多いのは、変形性膝関節症で骨の変形が起こったから痛いという考え方。
変形があっても痛みがない方はいますし、間違った運動パターンが繰り返されるから骨が変形して結果的に痛くなることがあるわけで、骨の変形を手術で改善しても痛みの改善にはつながらないことがあります。

つまり、可動域制限や痛みを改善するために手術で骨の変形を治す、それで改善されないのは仕方がないといった考えは間違いで、骨の変形を起こしてしまった運動パターンの異常を改善するべきということです。

膝関節の構造理解

これも膝関節の構造を理解した上でハンドリングすることで効果を高くすることができます。

大腿脛骨関節

1軸性の螺旋関節であり、屈曲・伸展に伴い、転がり運動と滑り運動が起こっています。

関節面は大腿骨の内側顆、外側顆と脛骨の上端が接しているだけで、関節構造としては非常に弱いという特徴があります。
股関節や肩関節と比べると周囲の筋群の密度は少なく、不安定な関節を補うために靭帯が発達しています。

 

<関節内靭帯>
前十字靭帯、後十字靭帯、膝横靭帯、後半月大腿靭帯

 

<関節外靭帯>
膝蓋靭帯、内・外側側副靭帯、内・外側膝支帯、内・外側膝蓋大腿靭帯、内・外側膝蓋脛骨靭帯、腸脛靭帯、弓状膝窩靭帯、斜膝窩靭帯

これだけ多くの靭帯で関節の前後・内外側を強く補強しています。

膝蓋大腿関節

膝蓋骨の裏面には軟骨が存在しており、関節運動に伴って大腿骨の膝蓋面上を移動します。

膝蓋骨の役割としては、以下の通りです。

・大腿四頭筋の損傷を防ぐ
・膝関節伸展筋力発揮の補助
・膝関節の保護

膝関節伸展に伴う大腿四頭筋の筋出力をサポートする、膝に蓋をする骨という読んで字のごとく前面からの衝撃から膝関節を保護する役割を担っています。

大腿脛骨関節の構造

大腿骨の底面を見ると、大腿骨内側顆>外側顆という形態をしているため、膝関節を前額面から見ると脛骨は外転しており、膝関節は外反位となります。
これを生理的外反と呼び、FTA(大腿骨長軸と脛骨長軸のなす角度)という角度を作っています。

FTAの正常角度は176°と言われており、180°を越えると膝関節は内反位、165°以下となると外反位となります。

これだけ考えると、脛骨は外反位なので斜めに接地するのではないか?という疑問が出てきます。
大腿骨の頚体角があることで大腿骨は内転位となっているので、足部は地面に対して平行に接地することができています。

膝関節構造から考える反張膝

内側顆>外側顆の話はあくまで屈曲・伸展0°の場合です。

実は大腿骨の関節面は前面まであり、過伸展となるのは骨構造的には異常ではないのです。
しかし、過伸展位では構造的に安定しないので直立した脛骨の真上に大腿骨が位置していることが理想。

関節面の前面では、内側顆>外側顆の関係が逆転しており、内側顆<外側顆となります。
ですので、過伸展位では脛骨は大腿骨に対して内転・内反するのです。

つまり、反張膝を防ぐには大腿骨を内旋、脛骨を外旋・外反する両骨のリズムが重要というわけです。

底面では大腿骨に対して、脛骨外旋・外反
前面では大腿骨に対して、脛骨内旋・内反

 

また、関節面の後面ではまた内側顆>外側顆の関係が逆転し、内側顆<外側顆となっています。

まとめると以下の通り。

前面:内側<外側顆
底面:内側>外側顆
後面:内側<外側顆

 

膝関節構造から考えるスクリューホームムーブメント

大腿骨内側顆>外側顆の構造から膝関節の伸展に伴って自然に脛骨が外旋します。

内側顆の方が大きく、内側顆の関節面が外側顆に向かって斜めに走行している構造的に自然に脛骨が外旋へ誘導されるようにできています。

さらに、靭帯の走行からも自然に脛骨が外旋へ誘導されるようになっています。

ACLは前顆間区から外側顆にかけて斜めに走行しており、膝関節伸展位で緊張します。
PCLは内旋を制動しており、LCL、MCLも伸展、外旋で緊張します。

つまり、膝関節伸展に伴って靭帯によって脛骨は外旋方向へ誘導されるということ。

 

言い換えると、この外旋の軌道から外れると靭帯にとっては過剰なストレスとなってしまうということ。

筋肉による制動が他関節より弱い膝関節では靭帯による制動ができないと構造的にかなり弱くなってしまう。
靭帯による自然な関節の動きが出ているか評価するためにも、スクリューホームムーブメントは見ておくべき要素です。

また、荷重下ではスクリューホームムーブメントも変化します。

足部がフリーの状態では脛骨が外旋でしたが、足部が床面に固定されている場合、脛骨に対して大腿骨が内旋することで相対的に脛骨の外旋を作ることができます。

立位や歩行では、脛骨に対して大腿骨を内旋位に持ってくるという機能が求められるということ。

OKC=大腿骨に対して脛骨が外旋
CKC=脛骨に対して大腿骨が内旋

このように覚えておきましょう。

 

変形性膝関節症のメカニズム

上記の内容から変形性膝関節症(以下、膝OA)の内反変形がどのように起こるのか理解できます。

CKCでは、脛骨に対する股関節の操作機能が重要。
ということは、脛骨に対して適切な位置へ股関節を操作できない場合に障害が起きます。

しかし、内旋できずに外旋位のままだと、膝関節が伸展できずに構造的な安定が得られません。

そこでどう適応するかというと、脛骨を強制的に外旋位へ持っていき、大腿骨を相対的に内旋位とすることで適応します。
脛骨の外旋が大きくなれば脛骨から見ると大腿骨は内旋位となります。

下腿を外旋位へ持っていくために足部を回内させて内側アーチがつぶし、脛骨の外旋が大きくなるに伴い、カップリングモーションで脛骨は外側へ傾斜します。

膝関節内反変形=股関節外旋+下腿外旋・外側傾斜

という流れで膝関節の内反変形が起こり、膝OAが発症することが考えられます。

股関節を内旋できない原因を考えると、骨盤の後傾やもっと上部の体幹や胸郭の影響もあります。

このことからも膝OAが膝だけを見ていても中々改善されないことがわかるかと思います。

 

関節適合性を考えた関節運動

ここまでの内容をまとめると、以下の通り。

膝関節伸展=大腿骨内旋+下腿外旋・外転
膝関節屈曲=大腿骨外旋+下腿内旋・外転

大腿骨内側顆>外側顆なので、大腿脛骨関節の関節面は軸がずれた平面関節です。
軸が前額面上に平行ではなく、斜めにずれているのがポイントととなります。

ずれているので、まずは関節面を適合させるために下腿を外転位へ誘導してから屈曲・伸展する必要があります。

外転位へ誘導せずに真っ直ぐに屈曲した場合、下腿は内転位となったままなので、大腿骨内側顆と脛骨内側の関節面はぶつかってしまいます。

OAの方は内反変形の場合が多いので、下腿は外旋・内転位であり、この傾向がより顕著に起こっていると考えられます。
ただでさえ、内反変形によって内側裂隙部で関節面同士がぶつかっているのに、関節構造を無視して真っ直ぐに屈曲する関節可動域運動を行うことは膝関節にとっては危険な運動なのです。

また、屈曲最終域付近では、内側顆<外側顆になるため脛骨の外側面とぶつかります。

屈曲初期から最終域の手前までは内側、最終域では外側で骨同士がぶつかるため、それぞれその部位で痛みが出やすいです。

 

屈曲時

膝関節屈曲時、脛骨内側面では滑り運動、外側面では転がり運動が起きています。
これは、脛骨関節面が凹、大腿骨関節面が凸の形状に由来しています。

大腿骨に対して脛骨が動く場合、脛骨内側の後方へ滑り+外側の後方へ転がり
脛骨に対して大腿骨が動く場合、大腿骨内側の前方へ滑り+外側の後方へ転がり

 

内側の関節面を軸にして外側面が動くことで関節運動が成り立っています。
これを考慮した上で下記のように動かします。

膝関節屈曲=大腿骨外旋+下腿内旋・外転ですので、屈曲へ誘導する際もこれを考えて動かせばいいわけです。

大事なのは相対的な骨の位置関係を考慮すること。

上記の複合運動に加えて、脛骨は近位が前方、大腿骨は遠位が前方に動きます。
ということは、脛骨の遠位は後方へ、大腿骨の近位は後方へ動く必要があります。

①.脛骨をやや外転位にして膝関節を外反位にする
②.脛骨を内旋位、大腿骨を外旋位へ誘導
③.脛骨を長軸方向へ押しつつ、膝関節を屈曲方向へ誘導(踵が大転子へ向けて屈曲する)
④.上記の流れに股関節屈曲方向への誘導を加えるとより良い(徒手的orクッションなどで対応)

伸展時

膝関節伸展=大腿骨内旋+下腿外旋・外転ですので、これを考慮して動かします。

上記の複合運動に加えて、脛骨は近位が後方、大腿骨は遠位が後方に動きます。
ということは、脛骨の遠位は前方へ、大腿骨の近位は前方へ動く必要があります。

 

①.大腿骨遠位、脛骨近位の内外側をそれぞれ把持する
②.脛骨をやや外転位にして膝関節を外反位にする
③.大腿骨は内旋方向、脛骨は外旋方向へ誘導
④.それぞれの方向へ誘導しつつ、両骨を膝関節の後方へ押し込むように動かす

 

膝関節の運動療法

さて、膝関節でも獲得した可動域を十分に活かせるように運動療法を取り入れることが重要です。
動作まで変えて再び症状が出ないようにしなければいけません。

脛骨に対する股関節運動

①.肩幅くらいに足を開いて立ち、つま先を内側を向き下腿内旋位とし、鼠径部を触れる
②.臀部を後上方へ突き出すように、股関節屈曲位、体幹前傾位とする(膝関節は軽度屈曲位)
③.脛骨は動かさず、大腿骨を外旋する

<ポイント>
・小趾側に荷重して下腿外旋位を意識
・膝が足部より前方へ出ないように注意
・膝が過伸展しないように注意

※脛骨に対する股関節の操作が膝関節にとって重要なので、股関節の部分で紹介した各運動療法も膝関節疾患に効果的。

 

足関節ってそもそもどんな関節?

足は唯一地面と接する部分であり、それだけ全身への影響力が大きい部分。
インソールのようにわずか数mmのバッドを少し入れるだけで歩行が変わることからもよくわかる。

 

唯一地面と接している部分

「足」は唯一地面と接しているという当たり前のことだが、それを認識しているかどうかが大事。

唯一地面と接しているということは、足部の状態によって動作が規定されてしまう可能性があるということです。

どういうことかと言うと、例えば足関節に回内制限があると回外優位で歩行しなければいけません。
そうなると、外側へ荷重して歩行する傾向が強くなり、下肢外側にある腓骨筋、腸頸靭帯、中臀筋、大臀筋などの緊張が高まり、それらへの負担が高くなってしまいます。

また、足部は多くの骨や筋肉によって構成されています。
どうしてこんなにも多くの骨や筋肉によって構成されているかというと、分節的に可動域を変化させて様々な場面で柔軟に対応する必要があるからです。

平坦な道もあれば不整地もあり、走ったり大きな力を発揮したりとあらゆる環境に対応することが足部には求められたので、このような形態をしていると考えられます。

つまり、柔軟な対応ができなくなった時、可動域が制限されて一定のパターンでしか動けないような形態になると機能障害が発生するというわけ。

 

感覚入力によって変化が出やすい

メカノレセプターと呼ばれる足底の感覚を伝える受容器が豊富に分布しています。
これによって、常に変化し続ける身体重心の動揺と床面との関係につき、床反力として求心性情報を提供されることで、静的・動的なバランスが保たれています。

触覚、圧覚、振動知覚、関節位置覚、運動覚のほかに、筋の張力、筋の伸張性速度や長さの変化を受容し、求心性に情報を伝達しています。

このことから、皮膚や関節包、筋腱の状態によって足底からの感覚情報が規定され、その感覚情報によって運動が規定されることが言えます。
足部には、細かい筋肉や関節が多く存在しているため、それだけ感覚情報から受ける影響も大きいことが考えられますね。

つまり、足部は構造的に制限があっても、筋や皮膚の障害によって感覚情報が適切に入力されなくても、その後の運動を規定してしまうことが言えます。

普段、私たちでも靴の中に小さい石が入っていたりすると歩き方も変化しますよね?
わずかな変化であっても敏感に感じ取り、運動へ影響を及ぼすだけの機能を有していることが言えますので、適切に感覚情報を感じることができる状態なのか?という視点で考えることが必要になります。

 

足部の構造的特性

足部は柔軟に可動性を変化することができると言いましたが、言い換えると他関節の制限の結果として足部で代償してしまうこともあり得るということ。

足部は身体全体として見ると、可動性に富んでおりモビリティの役割を担っています。
隣接関節のスタビリティを受けて、モビリティ関節として可動域を変化させ、筋力を発揮し、動作へとつなげることができます。

足部自体を見ても、距腿関節、距骨下関節、リスフラン関節、ショパール関節などなど、多くの関節が存在するため、それらを複合すると可動性に富んだ部位ということもわかるでしょう。

しかし、可動性に富んでいるがために他関節が硬く制限されると、それを代償するために可動性を変化させて対応することが考えられます。
これは他関節の動かない部分をフォローするための代償なのでメリットとも言えるのですが、慢性的にそのような身体の使い方となってしまうと、そのパターンで足部が適応して可動域に制限ができてしまいます。

そうなると、上述したモビリティースタビリティの関係が逆転したり、地面に対して可動性を変化して対応できずに過剰な負担となる、他関節の動きに対して対応できずに過剰な負担となることが考えられます。

つまり、可動性に富んで柔軟に対応できる能力を持っていますが、メリットにもデメリットにもなりえるのです。

足関節としてのゴール設定

現在の足関節・足部の状態

理想とする足関節・足部の状態

結論から言うと、以下の3つが重要。
・ 骨の動きに偏りがない
・ 外在筋、内在筋のインバランスがない
・ 他関節との協調性

 

骨の動きに偏りがない

足部には多くの骨がありますが、ポイントだけ絞って以下に挙げてあります。

・ 踵骨
・ 舟状骨
・ 立方骨
・ 内側楔状骨
・ 中足骨

これらの骨を丁寧に触り、その方向に制限されているのか?痛みはあるか?など確認していきます。

 

踵骨

踵骨は歩行のイニシャルコンタクトにおいては最初に接地する部位です。
ここの制限でその後の動きが大きく変わってくるので、最初に評価すべき部分です。

<評価のポイント>
・ 背臥位または腹臥位での距骨下関節の回内外の評価
(距骨を左右から指挟み、踵骨を動かして評価する)
・ 立位での距骨下関節の評価
(左右への荷重やしゃがみ込み時の踵骨の変化を評価)

荷重下(CKC)においては、脛骨が距骨下関節の運動方向に影響を与えています。

脛骨内旋→距骨内転・底屈→踵骨外反
脛骨外旋→距骨外転・背屈→踵骨内反

非荷重下(OKC)においては、距骨は脛骨の延長として機能するため、以下のように作用します。

脛骨内旋→踵骨外反・外転・背屈
脛骨外旋→踵骨内反・内転・底屈

このような運動連鎖を考慮して、踵骨の外反制限があるということは?などと考えてみてください。

また、距骨下関節においてはニュートラルポジションを探すことが重要であり、これがわからないとそもそも踵骨がどちらに偏っているかも判断できません。
ニュートラルポジションの探し方に関しては以下を参考にしてみてください。

①. 外果の上下を触診しつつ、距骨下関節を動かして前額面から見て上下が平行になる位置を探す
②. 距骨を左右から挟むように触診しつつ、踵骨を回内外へ動かし触診している部分に偏りがない位置を探す
 (過剰に回外すると外果側で触れている距骨が飛び出てくる、過剰に回内すると内果側で触れている距骨が飛び出てくることが分かるのでその中間を探す)

 

舟状骨

舟状骨は内側縦アーチの一番上にくる部分で触れることができます。
この時に内側楔状骨も一緒に触診します。
内側楔状骨よりも舟状骨が下方へ落ち込んでいる場合は、内側縦アーチの低下を意味しています。

アーチが落ちているからといって単純にアーチを挙げるようにインソールなど処方しても上手くいかないことが多いです。

それは、踵骨との関係を評価していないから。

踵骨が底屈・内転していると、舟状骨・内側楔状骨も一緒に落ち込んでしまいますので、この場合はまず踵骨を背屈位へ持っていく必要があるわけです。

また、舟状骨には後脛骨筋が付着しています。
これと腓骨から内側楔状骨、第1中足骨へ付着する長腓骨筋とでクロスサポートメカニズムを形成しています。

クロスサポートメカ二ズムとは、長腓骨筋と後脛骨筋が停止部で交差していることから互いに内外側へ足部を引っ張り、それによって底屈時の足部の安定化に貢献しているという機構です。

足関節は背屈位で脛骨と腓骨間に距骨がはまって安定性が高まり、逆に底屈位では骨性の安定性が乏しいので、筋肉によって安定性を高める必要があるということです。

舟状骨をはじめとする内側縦アーチの低下は後脛骨筋、長腓骨筋の働きを不十分にするため、この機構と関連して覚えておくと良いです。

つまり、ポイントとなるのは以下の3点です。

・内側縦アーチが破綻しているかどうか
・ 踵骨と舟状骨、内側楔状骨の関係性はどうか
・ クロスサポートメカ二ズムが機能できる状態かどうか

 

立方骨

立方骨は主に左右方向への動きに関連があります。
簡単な評価としては、立方骨が挙上している場合は荷重が不十分、立方骨が下制している場合は外側への荷重が優位になっていることが示唆されます。
下制している場合、過剰なストレスとなっていることが多いので、圧痛所見も認めることがあります。

立方骨が下制していると腓骨も下方へ落ちている場合があるので、一緒に評価しておきましょう。

また、踵骨と立方骨との関連も重要です。
踵骨と立方骨は踵立方関節を形成し、距舟関節とともにショパール関節を成しています。
ここで重要となるのが、踵骨の位置関係によって柔軟性と固定性が変化するという点です。

距骨下関節が回外位となると、踵骨は内反、立方骨は回内・前方傾斜し踵立方関節は締まりの位置になります。
距骨下関節が回内位となると、踵骨は外反、立方骨は回外・後方傾斜して緩みの位置となります。

つまり、ポイントとなるのは以下の2点です。

・ 立方骨が挙上しているのか、下制しているのか
・ 踵骨と立方骨の位置関係、締まりの位置か緩みの位置か

 

中足骨

特に重要となるのが、第1中足骨と内側楔状骨から成る第1列。
第1中足骨が背屈位で荷重すると、下腿は外旋。
第1中足骨が底屈位で荷重すると、下腿は内旋。

このように連鎖します。

第1中足骨底と骨頭を触診して他動的に動かしてどちらに制限があるのかで、背屈位か底屈位か判断できます。

これに以下の筋群の影響を考慮するとより正確に評価できます。
・ 長母趾屈筋
・ 長母趾伸筋
・ 足底腱膜
・ 短母趾屈筋
・ 母趾内転筋

 

外在筋・内在筋のインバランスがない

多くは内在筋の弱化が認められます。
可動域制限も内在筋が弱化していることで外在筋が優位に働くために起きている可能性があります。

評価すべきは、足関節底屈位でMP関節からの屈曲筋力が十分あるかどうかです。
これが弱い方が本当に多いし見逃しているセラピストも多くいる印象があります。

足趾屈曲に主に作用する内在筋は、短母趾屈筋と短趾屈筋。
どちらも踵骨から付着しているため、踵骨の可動性も非常に重要です。

内在筋を優位に働かせることができると、筋紡錘の感度も上がり、足底からの感覚情報を適切に入力することができます。

ポイントとしては以下の2点です。
・ 短母趾屈筋と短趾屈筋を分けてトレーニングする
(母趾、示趾・中趾、環趾・小趾に分けてそれぞれMP関節からの屈曲を意識)
・ 踵骨の可動性が十分あるかどうか

 

他関節との協調性

足関節・足部のみ評価したらいいわけではなく、他関節との影響も考慮する必要があります。

他関節との協調性が取れている状態として、私はディープフロントラインの筋連結を考慮して、そのライン上に何か制限する因子がないかどうか評価します。

後脛骨筋→膝窩筋→内転筋群→腸骨筋・大腰筋→腰方形筋→横隔膜

このライン上において、これらの筋の働きを阻害する因子はないかどうかで評価しています。

例えば、股関節において臀筋群が過剰に働いていると内転筋群は抑制されてしまうので、ディープフロントラインの筋連鎖はそこで途絶えてしまい、動作において過剰に負担がかかる部位が出てしまう可能性があります。
それが足関節や足部になる可能性も十分にあります。

 

足関節・足部の治療戦略

ここまでの内容から考え、治療の優先順位を考えてみると以下の通り。

1. 踵骨・距骨
2. 舟状骨・内側楔状骨・立方骨
3. 中足骨・足指
4. 他関節

この順番で評価を進めていくとスムーズに進められると思います。

理由としては、踵骨が足部における土台となうパーツであるから。
ですので、まずは土台である踵骨から順に遠位の部位へ進めていきましょう。

考え方は股関節・膝関節と一緒。
可動性を阻害している組織をリリースしてから関節可動域練習、運動療法で姿勢と動作パターンを変えるという流れ。

 

足関節周囲の筋間リリース

足根管-長母趾屈筋、長趾屈筋、後脛骨筋

足関節は構造的に内反しやすいため、ここの癒着が起こりやすい。
ここで癒着が起こると、踵骨の動きが制限されるため、まず見ておくべきポイント。

1.足根管の上部、下部それぞれで各腱間(長母趾屈筋、長趾屈筋、後脛骨筋)に指を入れる
2.それぞれ個別に収縮を促して組織間の癒着を剥がす

<ポイント>
・足趾屈筋は足関節底屈位で母趾、母趾以外で分けて収縮させる
・後脛骨筋は伸長位から収縮させる方向へ誘導しつつ行う
 →伸長位:足関節背屈・外反、収縮位:足関節底屈・内反
・足根管の上下でそれぞれ癒着を剥がす

 

長母趾屈筋-腓骨筋

長母趾屈筋は下腿外側から距骨の後方を通って足部の内側へと走行します。
走行から考えると、長母趾屈筋が硬くなると距骨が前方へ押し出されてしまう。
前方へ偏位することで、背屈に伴う後方滑り込みに制限が起こってしまう。

1.長母趾屈筋-腓骨筋間に指を入れる
2.指を入れたまま、母趾自動or他動運動

<ポイント>
・他動的に母趾を動かすことで触診で長母趾屈筋を特定しやすい

立方骨-小趾外転筋

立方骨はしばしば下方へ偏位しやすい。
なぜなら、圧倒的に外側荷重が多いから。

立方骨の下に付着する小趾外転筋を丁寧に骨から剥がすと立方骨が解放されて、制限が下方偏位が改善されることをよく経験する。

1.足部外側から立方骨-小趾外転筋間に指を入れる
2.小趾外転筋を下方へ剥がすようにしつつ、小趾自動or他動運動

<ポイント>
・小趾運動は難しいかもしれないので、他動運動の方が効率よく癒着を剥がせるかも

母趾外転筋-足底腱膜

この部分の癒着は第1列の制限を引き起こします。
第1列の底背屈で下腿まで運動連鎖するので、ここが原因で偏った動き、姿勢になっていることも十分あり得ます。

1.第1中足骨頭付近から足底腱膜間に指を入れる
2.足底腱膜を下方へ剥がすようにしつつ、母趾自動or他動運動

<ポイント>
・中足骨頭から骨底まで万遍なく癒着を剥がすことで中足骨がフリーに動ける

 

足関節に対する関節可動域運動

他関節同様、なぜ関節可動域制限が起こっているのかという部分を考えていくとどのようにリハビリを進めていく良いか理解できます。

足関節の構造特性

距腿関節

脛骨内果関節面、脛骨下関節面、腓骨外果関節面とそれに対応する距骨滑車から構成されています。

この関節の特徴としては、距骨滑車と対応する脛骨と腓骨で形成されるほぞ穴(果間関節窩)構造があること。

内果は外果の上前方に位置。
また、脛骨近位端に対して遠位端は約20~30°外捻しており、内外果を結んだ線は膝関節からみると外旋位となっています。
この構造により、内返しへは骨性の制限が弱く不安定であり、外返しへは骨性の制限が強く安定性が高いことがわかります。

距骨滑車は前方が後方より3〜5mm広くなっており、背屈時には距骨滑車が後下方へ移動するため、ほぞ穴の幅が広がることで背屈が可能となっています。

この際、背屈時に腓骨は開排・挙上・内旋、底屈時に集練(開排とは逆に締まる方向)・下制・外旋へ動いています。
逆に言えば、遠位脛腓関節に制限があるとほぞ穴が広がらず、背屈にも制限が出現する可能性があります。

また、背屈時には距骨滑車が脛腓関節に挟まれる形となり、骨性な安定性が得られ、底屈時には反対に骨性な安定性に乏しいと言えます。

距腿関節の関節軸は、内外果の尖端を通り、距骨体を通っています。
外果は内果よりも後下方に位置するため、外果から内果を貫く関節軸は前上方に傾いています。
(前額面で約10°上方、水平面で約6°前方)

まとめると、以下のように運動が起こります。

背屈=距腿関節背屈・外転・回内+腓骨開排・挙上・内旋
底屈=距腿関節底屈・内転・回外+腓骨集練・下制・外旋

 

脛腓関節

腓骨が脛骨の外側へ結びついてそれぞれ近位と遠位の脛腓関節を形成しています。
この両骨の連結を補助しているものが下腿骨間膜と呼ばれるもので、足関節・足部に付着する多くの筋群の付着部となっています。

近位脛腓関節

膝関節の下部外側に位置する滑膜関節。
脛骨外側顆の後外側面と腓骨頭で形成されます。

前後の靭帯によって強固な安定を得ており、その要素は以下の通りです。

近位脛腓関節の安定性に関わる要素
・関節包靭帯
・膝窩筋腱
・遠位脛腓関節

脛骨の凹状の腓骨切痕と腓骨遠位の凸状の内側面との連結によって形成されます。

この関節もまた、靭帯によって強固な安定性を得ており、その要素としては以下の通りです。

遠位脛腓関節の安定性に関わる要素
・骨間靭帯
・前脛腓靭帯
・後脛腓靭帯

足関節の安定性

ここで言う安定性とは、脛腓関節の関節面に対して距骨滑車の関節面が向きを変えることができる、距骨滑車の関節面に対して脛腓関節の関節面が向きを変えることができること。
どちらか一方のみでなく、両者が相互に関係し合いながら動くことで関節面から逸脱しない、安定していると言えます。

足関節に限らずですが、可動域制限や痛みの原因の多くは、この関節面のズレ、適合性の不良。

静的な状態では脛骨の約20~30°の外捻、外果-内果を貫く関節軸が前上方へ傾いている、距骨滑車が後方より前方が大きいといった形態から互いに向きを合わせることで関節の適合性を高めています。

この関節面の適合性を保ったまま関節運動を行うには、どちらかだけが動くのではいけません。

例えば、足関節背屈時には距骨滑車は後下方へ移動しますが、この時、背屈に伴う腓骨の開排・挙上・内旋、下腿の前傾が起こらないと、途中で外果とぶつかってしまい背屈制限を起こすことが予測できます。

つまり、距骨滑車の動きに合わせて脛腓関節、下腿全体も動くことで関節の適合性を保ったまま関節運動が可能となります。

また、今回は距腿関節と脛腓関節に着目していますが、中足部・前足部の動きも関係しています。

足関節の関節運動

足関節背屈

おさらいしますと、背屈=距腿関節背屈・外転・回内+腓骨開排・挙上・内旋でしたね。

外果と内果の位置関係から、遠位脛腓関節が近位に比べて20~30°外捻している、内果に比べて外果が後下方に位置していることを考慮すると、この遠位脛腓関節に対して距骨滑車を適合させる必要があります。

まず、外捻していることからやや外転位へ誘導して水平面での軸を合わせます。

回内させることで、前額面での軸を合わせます。

これで脛腓関節に対して距骨滑車の向きを合わせることができたので、後は距骨と脛骨・腓骨の相対的な位置関係を考慮しつつ動かすだけです。

具体的には、腓骨を外上方へ押しつつ背屈運動をする。
この時、腓骨は内旋するので外果の後方から押すようにするとより良いですね。

さらに、下腿前傾と距骨滑車の後方への動きを考慮し、下腿前傾(膝関節屈曲)を引き出しつつ、距骨を足関節の後方へ押し込むようにします。

まとめると以下の通りです。

1.距腿関節外転・回内へ誘導
2.腓骨後方から外上方へ誘導
3.膝関節屈曲方向へ誘導しつつ、距骨を後方へ押し込む

 

足関節底屈

おさらいしますと、底屈=距腿関節底屈・内転・回外+腓骨集練・下制・外旋でしたね。

底屈の場合も背屈と同様に、外果と内果の位置関係を考慮します。

背屈とは逆でやや内転位へ誘導して水平面での軸を合わせます。

回外させることで、前額面での軸を合わせます。

これで脛腓関節に対して距骨滑車の向きを合わせることができたので、後は距骨と脛骨・腓骨の相対的な位置関係を考慮しつつ動かすだけです。

具体的には、腓骨を内下方へ押しつつ底屈運動をする。
この時、腓骨は外旋するので外果の後方から押すようにするとより良いですね。

さらに、下腿後傾と距骨滑車の前方への動きを考慮し、下腿後傾(膝関節伸展)を引き出しつつ、距骨を足関節の前方へ引き出すようにします。

まとめると以下の通りです。

1.距腿関節内転・回外へ誘導
2.腓骨後方から内下方へ誘導
3.膝関節伸展方向へ誘導しつつ、距骨を前方へ引き出す

 

足関節の運動療法

さて、足関節でも獲得した可動域を十分に活かせるように運動療法を取り入れることが重要です。
動作まで変えて再び症状が出ないようにしなければいけません。

足趾の運動療法

1.土踏まずの中央部分を触れる
2.触れつつ足趾の屈伸
3.最初は全趾同時に行い、10回程したら母趾、示趾・中趾、環趾・小趾に分けてそれぞれ屈伸を行う

<ポイント>
・MP関節から屈伸するように意識
・各趾に分けてする場合は、それぞれの指へ軽く抵抗をかけつつするとやりやすい
・後脛骨筋と長腓骨筋の停止部で同時に刺激しつつ運動ができる

足関節の運動療法

1.内くるぶしから4横指程度上方の下腿中央を触れる
2.触れつつ足関節の底背屈を10回程度

<ポイント>
・後脛骨筋、ヒラメ筋、腓骨筋、足趾屈筋群を同時に刺激しつつ運動ができる

 

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松井 洸
ロック好きな理学療法士。北陸でリハビリ業界を盛り上げようと奮闘中。セラピスト、一般の方へ向けてカラダの知識を発信中。

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