2016/09/29

アナトミートレインの構造を捉える!ディープバックアームライン(DBAL)

 

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松井 洸
ロック好きな理学療法士。北陸でリハビリ業界を盛り上げようと奮闘中。セラピスト、一般の方へ向けてカラダの知識を発信中。
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本日はデープバックアームライン(以下、DBAL)のご紹介をします。

名前の通り、腕の後面の深層を走行しているラインです。

DBALの連結

菱形筋/肩甲挙筋

棘上筋/棘下筋/小円筋

上腕三頭筋

尺骨骨膜

小指球筋

頚椎から始まり、肩甲帯・上腕の後面を通り、尺側から小指にかけて走行するラインです。

DBALの特徴

①.3つの腱板筋群が含まれる

②.筋における眼球の制御と類似している

それでは、一つずつ解説していきます。

3つの腱板筋群が含まれる

DBALには、ローテーターカフ(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)の4つの筋群のうち、棘上筋、棘下筋、小円筋の3つが含まれています。

肩甲下筋は肩甲骨の内側に付着しているため、間接的にはDBAL上に含まれているんじゃないかなと個人的には思います。

肩関節におけるインナーマッスルであり、上腕骨頭の制御には欠かせないローテーターカフのうち3つも含まれているということは、DBALが肩関節に与える影響は非常に大きいものであることが予測されます。

ローテーターカフが上腕骨頭の制御に密接に関係しているということはご存知だと思いますので、今回考えて欲しいのはDBALとローテーターカフの関係性についてです。

DBAL上にローテーターカフが含まれるということは、DBAL上の他の筋群からもローテーターカフに影響を与える可能性があるということです。

例えば、DBALの終着点は小指になりますが、現代ではスマホやパソコンの普及で指の使用が多くなりました。
特にスマホなどは親指で操作することが多いのではないでしょうか?
となると、次回ご紹介するディープフロントアームライン(以下、DFAL)の終着点は母指になるのですが、DFALを頻繁に使用していることになります。
DFAL、腕における前面のラインを優位に使用しているので、後面のDBALはあまり働かなくなります。
DBALを使用する機会が減ることはローテーターカフを使いづらい環境となるので徐々に弱化していきます。
ローテーターカフが弱化することは、肩関節の動きにおける安定性が得られないので、アウターマッスルによる制御が行われ、インピンジメントや腱板断裂といった症状につながりやすいということが考えられます。

逆に言えば、小指から肘の伸展、上腕の外旋を意識して生活の中で使うことができれば上腕三頭筋を介してローテーターカフが活性化し、肩関節の安定性が得られやすいということが言えます。

実際に僕は臨床でも、小指、尺側を優位に働かせるために小指・環指でボールをつかんだり離したりといった運動、上腕外旋位・肘伸展位を保持したままで肩甲骨の前後へ動かすといった運動を取り入れています。

DBALは肩甲挙筋・菱形筋群から始まっているので頚椎・胸椎とローテーターカフの関係も深いものがあることが考えられます。
頚椎・胸椎のアライメントが整っていること、脊柱におけるインナーマッスル、多裂筋や頚長筋などが機能していることが前提にあることで、ローテーターカフの機能が引き出されます。

さらに、菱形筋群はスパイラルライン(SPL)でも登場したと思いますが、菱形筋群からDBALの棘下筋へと連結するライン、SPLの前鋸筋へと連結するラインへと分かれます。
SPLは身体を螺旋上に取り巻き、安定性を担っているのでSPLによる身体の安定性が得られていることがDBALのローテーターカフが機能するための前提条件であるとも捉えることができます。

ローテーターカフを考える際は、指・前腕・肘からの影響、頚椎・胸椎からの影響、SPLからの影響を考える必要がありますね。

筋における眼球の制御と類似している

解剖の教科書などを見て比べてみるとわかると思いますが、上腕骨頭を包んでいるローテーターカフと、眼球を取り巻く細かい筋群は構造が非常に似ていることがわかると思います。

アームライン全てに共通して言えることですが、普段の生活の中で目を閉じて物をつかんだり、操作したりするということはよっぽど特殊な環境でもなければ考えにくいと思います。
つまり、上肢を使用する動作は目による視覚情報があることが前提で行われています。
ですので、DBALと眼球における構造の類似は非常に興味深いものと言えます。

また、DBALは肩甲挙筋を介して上位頚椎と連結しています。
上位頚椎には目の動きに関わる後頭下筋群が存在しています。
上位頚椎を介して、DBALと後頭下筋群が関節的に連結しているので、やはり、上肢を使用する動作と視覚は密接な関係があると言えると思います。

先ほども述べましたが、現代ではスマホやパソコンの普及でDBALが優位に働きづらい環境であると言いました。
パソコンに向かって行うデスクワークの場面など想像してもらうとわかりやすいと思いますが、頭位が前方に変位しており、これが日常的に行われるとなると、頚椎にかかる負担が考えられそうですね。
さらに、胸椎後弯が強調された巻き肩のような姿勢で長時間作業するとより一層DBALは伸張されて優位に働きにくいです。
デスクワーク作業を続けると目が疲れてくるのは、パソコン画面を見続けているからだけでなく、このような姿勢から解剖学的に考えることでも目への影響が考えられますね。

DBALをリリースするストレッチ

では、DBALをリリースする簡単なストレッチをご紹介します。

①.座位or立位で両手を前ならえのように突き出す

②.小指側から前方に引っ張られているように腕を前方に突き出す

③.30秒程度保持したら元に戻し、数回繰り返す

ポイント

・あくまで小指から引っ張られるイメージ
・肘は伸展位、上腕は外旋位で肩が挙がらない、肘が曲がらないように
・頚部を屈曲するとより伸張されます

上記のポイントをふまえて実践してみてください。

おわりに

今回ご紹介したDBALは肩における安定性、視覚との関係が深いということが少しでもわかっていただけたら幸いです。

肩関節を評価する際には、ぜひ今回の内容をふまえてしてみてください!

最後までお読みいただきありがとうございました。

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松井 洸
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