2016/09/29

筋骨格系疼痛における筋膜リリースの実際

 

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松井 洸
ロック好きな理学療法士。北陸でリハビリ業界を盛り上げようと奮闘中。セラピスト、一般の方へ向けてカラダの知識を発信中。
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本日は大腿骨頸部骨折や肩関節周囲炎などの筋骨格系の障害に対する筋膜リリースの方法についてご紹介します。

筋膜についての基本的な知識は過去の記事に書いてありますので合わせてお読みください。

筋膜リリースとは?

筋膜は全身をボディースーツのように包んでいる膜であり、外傷や不良姿勢などによってストレスを受けるとそれを他の部位で代償しようとします。
ストレスが筋膜のつながりを介して全身へ波及してしまうのです。

そして、筋膜自体が自らほぐれることができなくなり、正しい姿勢や動作を行おうとしても姿勢保持や動作に筋膜由来の制限が生じてしまい、正しく行うこともできなくなってしまい、その結果痛みとして現れることがあるのです。

筋膜は血管、神経、リンパ管も貫いていますので、筋膜がねじれると血流不足による発痛物質の停滞、酸素不足、神経伝達速度の低下によるパフォーマンス低下、末梢神経由来の痺れや痛み、リンパの停滞によるむくみなども引き起こす可能性があります。

筋膜リリースによって筋膜のねじれを元に戻し、筋肉と筋膜の正しい伸張性を回復し、筋肉が本来もつ正しい動きを発揮できるように回復することで、上記のような症状を解消できる可能性があるのです。

筋膜リリースの方法

リリースとは、「解除する」、「解きほぐす」といった意味を持ちます。

筋膜リリースの目的としては、筋膜の構成組織である、コラーゲン線維とエラスチン線維が密集して固まっている部位に対してその部位を解きほぐし、運動性を回復することにあります。

至る所で交差しているコラーゲン線維とエラスチン線維のねじれを正しい方向へ時間をかけて解きほぐすことが基本的な方法となります。

ストレッチでは、筋繊維に対して平行に伸張させるようにしますが、筋膜リリースは一方向ではなく、様々な方向へ解きほぐします。
筋膜のねじれは一方向にねじれているだけの単純なものではないので、ねじれの方向をしっかりと評価する必要があります。

対象となる筋膜を丁寧に触診していき、硬く柔軟性がない部分に対して、どの方向に動きにくいか3次元的に判断します。

動きにくい方向に対して筋膜を伸張していき、最初の10秒ほどはエラスチン線維が伸張され、一旦伸張感が止まります。
そこからさらにリリースを続けると今度はコラーゲン線維がリリースされ始めるので90秒〜3分間程度続けると、制限されていた筋膜が解放され、柔軟性が取り戻されます。

注意点として、しっかりと狙った組織に対してリリースできているかということです。
深筋膜を狙ったのに圧が弱すぎて皮膚や浅筋膜までにしか圧が届いていない、逆に圧が強すぎて深筋膜を通り越して筋繊維自体に圧をかけている場合があります。

自分の前腕で練習してみてください。

指で軽く触れて上下左右に動かすと、皮膚や浅筋膜では大きく皮膚が動くのがわかります。
そこから少しだけ圧を強めると皮膚はわずかにしか動きません。
その部位にとどまって圧をかけることで治療効果が最大限に発揮されます。

もう一つ、治療者自身が力んでいては適切な圧をかけることができず、余計な緊張を相手に伝えてしまいます。
指先だけで操作しようとするのではなく、体の中心のほうから押して圧をかけていくイメージですると指先の力が抜けやすく、その分指先の感覚も鋭くなるのでリリースした感じも掴みやすいのではないかと思います。

マッサージでは効果がないのか?

硬くなっている組織に対してマッサージやリラクセーションなどで緊張をほぐしても良いのですが、多くは一時的な効果にとどまってしまいます。

筋膜は全身に波及しており、小さい頃の足首の捻挫や何十年も前の骨折などが原因で筋膜がねじれて、そのねじれた状態で運動パターンが出来上がってしまいますので、一部分だけのマッサージではなく、全身をトータルに見て筋膜のつながりをほぐしてあげることが高い効果を発揮します。

*筋膜の繋がりはアナトミートレインの記事をご参照ください。

アナトミートレインとは?筋膜の繋がりを知る

筋膜リリースの手順

では、筋膜リリースの手順について簡単にまとめてみます。

①.姿勢、動作、過去の既往などから制限されている組織を同定する

②.対象組織に対して圧を加え、3次元的にどの方向に動きにくいか評価する

③.動きにくい方向に対して圧をかけつつ伸張する

④.そのまま90秒〜3分間ほど保持する

⑤.組織がゆるんだ感覚があり、これ以上ゆるむ感じがなくなったら終了

⑥.効果判定し、治療終了あるいは再評価し再度リリース

ポイント

・狙った組織に適切な深度の圧をかける

・治療者自身は力まずリラックスする

・筋膜の制限方向は一方向ではなく、3次元的に判断する

上記のポイントをふまえて実践してみてください。

おわりに

リリースして結果がでたとしても、運動パターンが変わらなければ再び元に戻ることも考えられるので筋膜リリースとセットで動作指導などもしっかり行ってください。

筋骨格系の障害には大きな効果がありますので是非お試しください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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