2018/04/14

肩関節疾患への運動療法【腱板断裂に何となくカフエクササイズをしていませんか?】

 

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松井 洸
ロック好きな理学療法士。北陸でリハビリ業界を盛り上げようと奮闘中。セラピスト、一般の方へ向けてカラダの知識を発信中。
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いつもお読みいただきありがとうございます!
リハ塾の松井です。

疼痛や可動域制限など徒手的に介入しても動きそのものが変わっていなければすぐに元に戻ってしまいます。

その場はいいけど翌日になると痛い…。

このような訴え一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?

本記事では、肩関節にフォーカスして臨床で使える運動療法をご紹介します。
運動療法まで指導して動作レベルで運動を変えましょう!

運動療法をおこなう目的

肩関節周囲炎や腱板断裂の術後に伴う、可動域制限や痛み。

ROMexやストレッチ、マッサージなどで一時的には効果は得られます。

しかし、獲得した可動域や筋肉の柔軟性があっても、力の入れ方がわからない、動かし方がわからない。
このような方は多くいらっしゃいます。

運動療法の目的としては以下の3つ。

・運動の再学習
・獲得した可動域、柔軟性を保つ
・再発予防

運動療法によって、今までうまく使えていなかった部位を使ってもらう。
獲得した可動域を動作に活かすためのツールとして用います。

また、マッサージなどセラピストが提供するものに依存的にならないためにも、運動療法を自ら実施してもらうことも重要です。

依存心が強いと、自分の体を自らなんとかしようとしなくなり、慢性痛の原因ともなりえます。

自らの体に意識を向けてもらい、何ができて何ができないのか。
運動を通して感じてもらい、自分の体には責任を持って自立してもらう必要があります。

そういった意味では、運動療法の重要性はかなり大きいと考えます。

 

肩関節における問題点

まず、肩関節運動を分解すると以下の要素から成り立ちます。

肩関節運動=上腕骨+肩甲骨+鎖骨+胸骨+胸椎+肋骨(+腰椎+骨盤+大腿骨)

これらの要素のどこに問題があるのかを評価し、そこに対してアプローチすることが必要です。

胸椎の制限が問題で肩甲骨がうまく動けないとすると、筋力が弱いからといってカフエクササイズをいくらしても大きな効果は見込めません。

この場合は、胸椎に対して徒手的なアプローチ→胸椎に対して運動療法という流れを考えるべきです。

 

肩関節におけるマルアライメント

多いのは、上位交差症候群と呼ばれるアライメント。

・上位頚椎伸展
・下位頚椎屈曲
・胸椎後弯
・肩甲骨挙上、外転、上方回旋、前傾
・肩甲上腕関節内旋

首が前に出て、背中が丸く、巻き肩のような姿勢。

 

筋肉に置き換えると以下のようになる。

緊張している筋肉
・後頭下筋群
・大胸筋
・小胸筋
・三角筋前部繊維
・広背筋
・肩甲下筋
・大円筋
・前鋸筋
・僧帽筋上部繊維
・肩甲挙筋
・腹直筋

弱化している筋肉
・頚長筋
・三角筋後部繊維
・棘下筋
・小円筋
・菱形筋群
・僧帽筋下部繊維
・脊柱起立筋

胸部-肩甲帯上部、頚部前面-肩甲帯下部の対角線上の関係になっています。

 

大胸筋、広背筋、肩甲下筋、大円筋によって、肩関節の屈曲・外転・外旋が制限。

小胸筋、前鋸筋、肩甲挙筋、僧帽筋上部繊維によって、肩甲骨の下制、後傾、内転、下方回旋が制限。

これに加えて、胸椎の後弯によって肩甲骨が挙上、前傾、外転、上方回旋位で固定されてしまうため、上腕骨の動きに対して肩甲骨の向きを変えることが難しくなります。

肩甲上腕リズムにエラーが起こり、肩甲上腕関節でのインピンジメントも起こりやすくなります。

 

胸椎がフラットで肩甲骨が胸郭上を滑りにくいことで肩甲上腕リズムのエラーを起こしているパターンもあります。

 

ここでの問題は、肩甲上腕リズムのエラー。

これを解消するには、大胸筋のストレッチなど肩甲上腕関節だけの視点では改善しない場合がほとんど。

胸椎→肩甲骨→上腕骨、場合によっては下肢や骨盤からの運動連鎖がスムーズに起こるようにマルアライメントを修正する必要がある。

 

肩関節における問題改善のポイント

ポイントは以下の3つ。

・スパイラルラインの機能化(前鋸筋-外腹斜筋-内腹斜筋-大腿筋膜張筋)
・胸椎の可動域制限
・脊柱の機能化(インナーマッスルの機能化)

スパイラルラインに関しては以下の記事をご参照ください。

 

前鋸筋はスパイラルラインによって、外腹斜筋から反対側の内腹斜筋、股関節へと繋がっています。

さらに、腹斜筋群は腹横筋、横隔膜、大腰筋というふうに表層から深層への繋がりも持っています。

前鋸筋を機能的に使えることで、体幹や下肢を安定した状態で肩関節運動をすることができるということ。

 

また、前鋸筋と棘下筋、小円筋を協調して働かせることで、水平面上で肩甲骨内側が外側へ移動するような動きが起こります。
肩甲骨内側が浮き上がるような形です。

この状態を作れることで、上腕骨頭を水平面でも捉えることができ、3Dで骨頭の動きを捉えることができます。

これによって、骨頭が臼蓋から逸脱しないように動きに合わせて追うことができます。

つまり、胸椎、胸郭のアライメントを整え、肩甲骨の位置を戻した上で、前鋸筋を機能的に働かせることが重要ということ。

 

胸椎は脊柱の中でも回旋に特化した関節面の形状をしています。

しかし、胸椎が大きく後弯、あるいは前弯してフラットになると、回旋可動域は制限されます。

それを代償して頚椎、腰椎に回旋ストレスが必要以上にかかると、筋肉のアンバランスが起こります。

脊柱全体のバランスを整えるためにも、腹直筋を伸ばし脊柱起立筋を縮める、脊柱インナーマッスルの多裂筋を働かせた上で、胸椎の回旋制限を改善する必要があります。

 

肩関節に対する運動療法

主に体幹、肩甲骨、肩甲上腕関節に対する運動療法を中心にピックアップしています。

患者さんに合わせて負荷量を調整して実施してみてください。

 

腕の突き出し・回旋

<目的>

前鋸筋、棘下筋、小円筋を狙ったエクササイズ
僧帽筋上部繊維、菱形筋群、肩甲挙筋の抑制
体幹インナーマッスル(横隔膜、多裂筋、骨盤底筋群、腹横筋)の賦活

<方法>

・突き出し
1.背臥位(あるいは膝立て背臥位)となる
2.手・肘を伸展位で肩関節屈曲90°とする
3.前腕は中間位、上腕は外旋位とする
4.その状態を保ちつつ、天井へ向かって指先を突き出す
5.元に戻す

・回旋
1~4までは同様
5.突き出したまま、円を描くように左右へ回す

<ポイント>

・難易度は膝立て背臥位→背臥位の順に負荷は少ない
・第10肋骨-ASIS-恥骨結合を一直線上に保つ
・肩甲帯挙上、肩関節内旋位とならないように注意

 

胸椎の伸展

<目的>

胸椎の伸展を引き出す
頸椎、腰椎の負担を軽減
腹直筋の伸張、抑制

<方法>

1.背臥位(あるいは膝立て背臥位)となる
2.肘関節屈曲90°とし、肩甲帯下制、肩関節外旋方向へ力を入れる
3.肘で床面を押して、胸椎を伸展させる
4.元に戻る

<ポイント>

・腰椎ではなく、胸椎の伸展を意識させる
・肩が浮かないように注意
・顎を引いたまま伸展する
・吸気に合わせて伸展する

 

上部体幹に対する下部体幹の回旋

<目的>

上部体幹に対する下部体幹の柔軟性を引き出す
体幹インナーマッスルの賦活
腹直筋、腹斜筋群の伸張、抑制

<方法>

1.膝立て背臥位となる
2.両手でみぞおちを軽くおさえ、肩甲帯下制、肩関節外旋方向へ軽く力を入れる
3.2の状態を保ちつつ、下肢を左右へ倒す
(膝関節90°、股関節90°で持ち上げておこなうと負荷量が上がる)

<ポイント>

・みぞおちから捻るイメージで動かす
・肩が浮く、すくまないように注意
・第10肋骨-ASIS-恥骨結合を一直線上に保つ
・素早くおこなわず、ゆっくりと動かす

 

両手・両足の挙上

<目的>

前鋸筋、棘下筋、小円筋を狙ったエクササイズ
体幹インナーマッスルの賦活
腹直筋、脊柱起立筋の抑制

<方法>

1.背臥位となる
2.両肩関節屈曲90°、両膝関節、股関節90°屈曲位とする
3.2の状態を5秒保持
4.元に戻す

<ポイント>

・第10肋骨-ASIS-恥骨結合を一直線上に保つ
・肩甲帯の挙上の代償を防ぐため、肩甲帯下制、肩関節外旋方向へ軽く力を入れる
・呼吸は止めない

 

胸椎の回旋(側臥位)

<目的>

胸椎の回旋を引き出す
頸椎、腰椎の負担を軽減
腹直筋、腹斜筋群の伸張、抑制

<方法>

1.側臥位となる(上側の下肢を前方に置くと骨盤がぶれずに安定する)
2.両手を胸の前で組む(上側の肩関節を肩甲骨面上に屈曲・外転位でおこなうと負荷量が上がる)
3.後ろを振り向くように、胸椎を回旋する
4.元に戻る

<ポイント>

・骨盤が後方回旋しないように注意
・腰椎ではなく、胸椎の回旋を意識させる
・吸気に合わせて回旋する
・肩関節屈曲、外転位で行う場合、肩甲帯の挙上に注意

 

四肢CKCでの脊柱運動(四つ這い)

<目的>

肩関節、股関節への求心性刺激
ローテーターカフ、大腰筋への荷重による刺激の入力
脊柱の可動性改善

<方法>

1.四つ這いとなる(肩関節、股関節屈曲90°)
2.肩甲帯下制、肩関節外旋、第10肋骨-ASIS-恥骨結合が一直線上になるように力を入れる

脊柱側屈
3.2の状態を保ちつつ、脊柱を左右へ側屈

脊柱屈伸
4.2の状態を保ちつつ、脊柱を屈伸

<ポイント>

・頭部挙上、肩甲帯挙上、腰椎過伸展の代償に注意
・肩甲帯、骨盤が左右へずれないように注意

 

パピー肢位での脊柱運動

<目的>

肩関節への求心性刺激
ローテーターカフへの荷重による刺激の入力
脊柱の可動性改善

<方法>

1.パピー肢位となる
2.肩甲帯下制、肩関節外旋方向へ軽く力を入れる
3.2の状態を保ちつつ、左右へ重心移動
4.2の状態を保ちつつ、脊柱の屈伸

<ポイント>

・頭部挙上、肩甲帯挙上の代償に注意
・腹部はなるべく床面へつけておく

 

座位での脊柱運動

<目的>

脊柱の可動性改善
抗重力位での体幹運動

<方法>

1.端座位となる
2.みぞおちを触れる
3.みぞおちを触れたまま、脊柱の屈伸、回旋、側屈

<ポイント>

・肩甲帯挙上の代償に注意
・足部は床面に接地したまま動かないように注意
・屈伸時は腰椎、回旋時は胸椎を意識
・素早く動かさず、ゆっくり大きく動かす

 

遠位を固定し肩甲骨エクササイズ

<目的>

前鋸筋、棘下筋、小円筋を狙ったエクササイズ
僧帽筋上部繊維、菱形筋群、肩甲挙筋の抑制
肩甲骨の可動性改善

<方法>

1.端座位となる
2.手背を大腿内側へ当てる(できるだけ大腿近位に)
3.手、肘関節伸展位で肩甲帯下制、肩関節外旋方向へ力を入れて、大腿内側を押す

<ポイント>

・肩甲帯挙上、体幹後傾の代償に注意
・手ではなく、肩から動かすイメージでおこなう
・第10肋骨-ASIS-恥骨結合が一直線上になるようにする

 

腕の突き出し(座位)

<目的>

前鋸筋、棘下筋、小円筋を狙ったエクササイズ
僧帽筋上部繊維、菱形筋群、肩甲挙筋の抑制

<方法>

1.端座位となる
2.手、肘関節伸展位で肩関節屈曲90°とする
3.体幹がぶれないように肩甲骨から腕を前方へ突き出す
4.元に戻る

<ポイント>

・肩甲帯挙上、脊柱屈曲の代償が出ないように注意
・第10肋骨-ASIS-恥骨結合が一直線上になるようにする
・肩甲骨から前方へ動かすイメージでおこなう

 

まとめ

・動作を変えるためには運動療法が重要

・肩関節運動を変えるポイントは、骨・関節でみると肩甲骨と胸椎、筋肉でみると前鋸筋と外旋筋群

・体幹と四肢の連動を意識して運動療法を展開する

 

おわりに

いかがでしたでしょうか?

ストレッチやマッサージで可動域や筋力に改善が認められても、獲得した機能を運動で使えるかと言うと別の話。

どのように動かすのか、どのような動きがだめなのか。

これを運動の中で本人に感じてもらうことが重要となります。

是非、本記事を参考に運動療法を組み立ててみてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

参考・引用文献

1.近良明、桑原匠司:運動療法としてのピラティスメソッド アスリートに対する実践的プログラミング

2.Amanda Terease、新関真人:PILATES Mastery マットワーク編 習熟したい人のピラティス・テキスト

 

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