2017/09/09

頚椎の痺れや痛みに対応する捉え方

 

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松井 洸
ロック好きな理学療法士。北陸でリハビリ業界を盛り上げようと奮闘中。セラピスト、一般の方へ向けてカラダの知識を発信中。
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頚椎は頚椎性脊髄症、頚椎椎間板ヘルニア、後縦・黄色靭帯骨化症などの変性疾患によって、運動障害、知覚障害などの症状を呈します。

頚椎はあまり触診などしないかもしれませんが、他の部位にも大きな影響を及ぼすかなり重要な部位ですので特徴をおさえて頚椎について考えていきましょう。

頚椎の特徴

頚椎の機能的な特徴

まず、頚椎は胸椎・腰椎とは異なった構造をしています。
なぜ異なった構造をしているのか理解することが頚椎疾患のリハビリをする際にも重要になるかと思います。

頚椎の上部には頭部が位置しており、目・耳・鼻などの感覚器が存在しています。

感覚器の機能を果たすためには頚椎の十分な可動性があることが前提で、頚椎の十分な可動性によって対象を正面で捉えることができ、それによって見る・聞く・嗅ぐといった動作が遂行できます。

もし、頚椎が全く動かなかったらなにか見るためには体全体を動かす必要がありますし、とっさに後ろを振り向くなんてことできないですよね。

耳や鼻も目と連動しているところがあり、音のする方向を感知して目で対象物を捉える、匂いの方向を感知して対象物を捉えるなど、頚椎の可動性があって成り立ちます。

つまり、頚椎は頭部の位置に合わせて動けるだけの柔軟な可動性を有している必要があるのです。

頚椎の構造的な特徴

上位頚椎は環椎後頭関節(C0-1)と環軸関節(C1-2)とそれ以下の下位頚椎(C3-7)で構成されています。

・環椎後頭関節:環椎の内側方向への凹面と後頭顆の凸面で構成され、屈伸の動きが主。
        屈曲・伸展可動域はそれぞれ15°で頚椎全体の屈伸の動きの50%を担う。

・環軸関節:軸椎の上関節面の角度が水平面に対し、約20°であり、回旋の動きが主。
      回旋可動域全体の50%、40~45°を環軸関節が担っている。

・下位頚椎:上関節面が前額面に対して約45°で下位へいくほど傾斜が増加し、屈伸が大きく、側屈と
      回旋が続く。

上位頚椎と下位頚椎の決定的な違いとしては、下位頚椎には存在する鈎状突起と椎間板が上位頚椎には存在しないということです。

鈎状突起と上位椎体によって鈎椎関節が形成され、安定性がありながらも屈曲・伸展の動きに対して制限しないといった特徴があります。
また、鈎状突起によって椎間孔の前後径、椎間板や椎間関節は椎間孔の上下孔を確保しています。

これらによって頸神経が走行するスペースを確保しています。
頚部や上肢の痺れなどの症状を考えるにはこの構造を理解しておく必要があります。

また、鈎椎関節は側屈・回旋を制限する構造にもなっていますので、横突起を通過する椎骨動脈が過度に捻れないようにできています。

逆に下位頚椎にある鈎状突起と椎間板が存在していないことによる影響はなにかというと、上位頚椎の可動性は屈伸、回旋ともに全体の50%をも占めていると上述しました。
これだけの可動性がありながらも椎間板がないので、比較的アライメントの変化が起こりやすい部位であると言えます。

上位頚椎には脳幹が位置しています。

上位頚椎のアライメントの変化は少なからず脳幹にも影響を与えます。
脳幹の前庭神経核で前庭感覚、眼球運動、頚部固有感覚が統合され、小脳や大脳皮質で処理されるとともに脊髄に投射され、姿勢保持に関与しています。

ですので、上位頚椎のアライメント不良はバランス能力の低下に関与する可能性があります。

バランスが悪いからと、片脚立位練習やバランスマットでの練習などを実施しても、そもそものバランス能力の低下が筋由来のものではなく、上位頚椎由来の症状だとしたら思うように改善しないのはイメージできるかと思います。

姿勢と頚椎

上述したように頚椎の上部には頭部が位置しています。

重力の影響で頭部は前方へ垂れやすく、頭部が前方偏位することで上位頚椎の過伸展・下位頚椎の屈曲となりやすいです。

スマホ操作やデスクワークなどで特徴的な姿勢ですよね。

頚椎と頭部の位置関係上、さらに現代人の流れからして頭部前方突出位によるアライメント不良、そこからくる屈筋と伸筋のインバランスが起きやすいです。

・過緊張となりやすい筋群:後頭下筋群、僧帽筋上部、肩甲挙筋、大胸筋、小胸筋
・弱化しやすい筋群:頚部深部屈筋群、菱形筋群、僧帽筋下部

上記のようなインバランスとなりやすいです。

頚部の症状を考えるにはこのような筋の関係性を理解しておくと、どこへアプローチしたらいいか明確になりやすいです。

また、椎間孔の構造上は下位頚椎で断面積が小さく、椎間孔による神経への影響が起きやすいのですが、上述した姿勢と頚椎の関係性から考えると、下位頚椎は屈曲方向へ偏位しやすく、その結果上位頚椎が過可動性を呈してメカニカルストレスを受けやすいと言えます。

構造上の特徴と機能的な特徴の双方から考えることは症状を捉える上で重要な視点です。

頚椎における姿勢制御機能

脳幹が姿勢制御に関わっていることは既に述べましたが、筋肉よる筋性の制御ももちろん考えなければいけません。

頚椎の動的安定性は頚椎のインナーマッスルとされる、頸長筋・後頭下筋群・多裂筋・半棘筋・回旋筋によって制御されます。

 

これらの筋群には筋紡錘が多く存在しています。

筋紡錘はインナーマッスルのような微妙で繊細な運動や重力に対する空間的保持に関わる筋に多く存在する傾向にあります。

もちろん、頚部のインナーマッスルにも筋紡錘が多く分布しており、姿勢制御に大きく関わります。

頚椎アライメントの偏位、アウターマッスルの過緊張がない状態がインナーマッスルが機能している、機能できる環境であり、インナーマッスルを機能させるには頚椎アライメントを整える、アウターマッスルを抑制すればいいわけです。

今回は、頚椎のアウターマッスルの抑制によってインナーマッスルが機能しやすい環境を整えるといった視点で考えると

例えば、上述した過緊張となりやすい筋群から肩甲挙筋を抑制してみます。
C1~4の横突起から肩甲骨上角に付着しています。
起始部は繊維が分かれているので、上角からストレッチをかけます。
停止部付近の筋繊維を軽く指で押圧しつつ、上角方向へ牽引するようにストレッチします。
よりストレッチをかけたい場合は、頚部の反対側への回旋をしてもらうといいです。

頚部の筋群は細かい筋群が多く、頚部自体、下肢や上肢のように大きな動きはできず、関節を操作してストレッチをかけるよりは、筋自体に機能的なストレッチをするほうがいいかと思います。

おわりに

頚椎の基本的な構造と特徴をふまえておくと、症状から局所の状態がどうなっているか捉えやすいと思います。

ここが理解できていないと、闇雲に評価することとなり、頚椎は重要な組織も多くあり繊細ですので、リスクも大きいです。

しっかりとした知識の元、施述を行う必要がありますので、必ずおさえておきましょう!

最後までお読みいただきありがとうございました。

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