腓骨遠位端骨折のリハビリ【足趾のトレーニングは各趾分けてするべき】

 

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松井 洸
ロック好きな理学療法士。北陸でリハビリ業界を盛り上げようと奮闘中。セラピスト、一般の方へ向けてカラダの知識を発信中。
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いつもお読みいただきありがとうございます!
リハ塾の松井です。

腓骨骨折はスポーツ外傷で起こりやすい骨折の一つ。
スポーツ以外では、捻挫や足部に重いものが落ちてきたなどが受傷起点となることが多いです。

股・膝関節疾患などと比べて足部疾患は多くはないですが、可動域制限も残りやすいため細かい評価とアプローチが必要になります。

本記事では、足部の基本的な構造、腓骨骨折のリハビリの進め方について解説しています。

腓骨骨折の概要

下腿の骨といえば、脛骨と腓骨の二つありますが、腓骨骨折は外側の腓骨が骨折することを指します。

この腓骨の遠位端が骨折することを腓骨遠位端骨折と呼ばれます。

 

腓骨が骨折する要因としては主に二つあります。

一つは、内反捻挫によって腓骨外果から距骨へと付着している、前距腓靭帯が遠位へ強制的に引っ張られることによって腓骨遠位端骨折を受傷します。

もう一つは、スポーツなどによる直接的な衝撃によって骨折する場合。

腓骨の役割

脛骨と比較すると分かりますが、脛骨に比べて腓骨はかなり細い骨ですので、割と簡単に骨折してしまう部位でもあります。

体重を支えるのは主に脛骨なので腓骨は補助的な役割を持っているためこのように細い構造となっています。

 

足関節底背屈に合わせて腓骨は挙上、下制しますので、腓骨の動きは足関節の動きに関与しています。

試しに腓骨頭を上から押さえて動かないようにした状態で底背屈してみてください。
おそらく、足関節の動きに制限がでるはずです。

このことからも腓骨が足関節の動きに関与していることが分かりますね。

 

また、腓骨外果は脛骨内果よりも下方へ飛び出ているため、構造的に足関節外反は少なく、内反は大きくなっています。

もしも、腓骨が下方へ出ていなかったら、立脚期に接地した際に簡単に足関節は外反方向へぐしゃっと潰れてしまうことが予測できます。

内側アーチも簡単に潰れてしまいますね。
内側アーチがあることで接地時の衝撃を吸収、その後のつま先離地へとつなげることができます。

内側アーチが潰れると、下腿は外側へ傾き、膝関節は内反方向へのストレスがかかるため、膝OAで特徴的な膝内反変形も起こりやすくなるでしょう。

 

<腓骨の役割>
・足関節の動きに関与
・歩行時の衝撃吸収に関与

足関節骨折の分類(Lauge-Hansen分類)

足関節の骨折の分類として広く用いられているものとして、Lauge-Hansen分類があります。

以下の4つに分けられています。

<Lauge-Hansenの4つの分類>
・SERタイプ
・SAタイプ
・PERタイプ
・PAタイプ

メリットとしては、外力の方向、損傷の程度が判別でき、保存療法のための整復時に必須の評価です。
デメリットとしては、分類が難解であり、再現性にも乏しいことが挙げられます。

SERタイプ:Supination external rotation

このタイプは、足首を内側に捻る、回外に回旋ストレスがプラスして起こることで受傷した状態を指します。

回旋ストレスが加わりつつ骨折するため、骨折線が斜めに走るのが特徴です。

4つの分類の中では最も受傷頻度が高いタイプでもあります。

 

回外が受傷起点であり、外果→後果→内果の順に骨折が起こります。

 

足関節外側へ牽引ストレスが強く加わるため、距腓靭帯や脛腓靭帯の損傷を伴う場合があります。

この靭帯が損傷すると、回外方向への可動性が緩く、足関節が不安定となる恐れがあるため、回内方向へ作用する筋の働きが重要となるということですね。

SAタイプ:Supination adduction

このタイプは、足首を内側に倒すような動きで受傷します。

SERタイプと違うのは、回旋ストレスが加わらない状態を指しており、骨折線は横方向に走ります。

PERタイプ:Pronation external rotation

今までのタイプとは逆に外側へ捻る動き、回内+回旋で受傷することを指します。

上記二つのタイプとは反対に、内果→後果→外果の順に骨折が起こります。

 

足関節内側へ強くストレスが加わるため、三角靭帯や脛腓靭帯も損傷することがあります。

この場合は、回外方向へ作用する筋の働きが重要ですね。

PAタイプ:Pronation adduction

このタイプは、SAタイプと反対の動きで回内方向へ倒れることで受傷します。

回旋ストレスは加わっていないので、骨折線は横方向ですね。

足関節の分類(AO分類)

この分類は、腓骨の骨折部位の位置で重傷度が分けられています。

脛腓靭帯を基準として、以下の3つの分類に分けられます。

Aから順に重傷度が高くなります。

<AO分類の3つのタイプ>
・Aタイプ:脛腓靭帯より遠位
・Bタイプ:脛腓靭帯と同じ高さ
・Cタイプ:脛腓靭帯より近位

メリットとしては、簡便で観血的治療法の決定に適しています。

引用:日本骨折治療学会

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腓骨骨折の治療

保存療法

靭帯の損傷がなく、骨折があってもズレがない場合に適応されます。

手術療法

多くは手術療法が適応されます。

骨折部を元の位置へ戻し、ネジやボルトを用いて足関節の動きによってずれないように固定します。

靭帯損傷、はく離骨折がある場合はその部位も修復します。

腓骨骨折のリハビリテーション

疼痛に応じていきなり全荷重かけても大丈夫の場合もありますが、多くは骨折の状態に応じて1/2荷重、2/3荷重、全荷重というように荷重していきます。

受傷から荷重開始まで(受傷から2~3週間程度)

この時期は受傷または術後直後で腫脹が強く、疼痛も強いため、可動域は制限され筋出力は低下していることが予測されます。

この時期に過負荷になるようなことをすると、より炎症や疼痛を強めてしまい、治癒の遅れにもつながりますので注意するべきです。

無理にROMexを進めても腫れが引かない限りは改善は見込めないので、積極的におこなってもあまり効果はでません。

 

この時期で重要なのは、疼痛を強めないように炎症をできるだけ早く治めること、骨癒合を阻害しないこと。

炎症を早く治める

要は、血流が悪く足部に停滞してしまうと腫れは中々引きません。

つまり、血流を阻害する因子を排除するように進めていけば炎症をできるだけ早く治めることもできます。

 

具体的には、以下のポイントを中心に進めていきます。

<炎症を治めるためのポイント>
・血管が通る部分に制限を作らない
→屈筋支帯の下には後脛骨筋、長母趾屈筋、長趾屈筋の各腱、脛骨神経、後脛骨動脈、後脛骨静脈が通っているため、各組織間の癒着や回外制限があると血流が悪くなる可能性がある
→伸筋支帯の下には長母趾伸筋、前脛骨筋の各腱、足背動脈が通っているため、底背屈制限があると血流が悪くなる可能性がある

・足部から心臓までの経路で滞りがないか
→膝窩、鼠径部、みぞおちに硬さがないか

・アウターマッスル、インナーマッスルどちらも過緊張がない
→足内在筋が機能不全を起こすと、アウターマッスルは過緊張となりやすいため、内在筋の機能低下が起こらないようにする

筋の緊張が高い部分は血行が阻害されている可能性があり、血流も滞ってしまい、結果的に腫れが治まるのを遅くさせてしまいます。

また、血液は循環しているため、必ず心臓に戻ってきます。
足部だけでなく、心臓までの経路の中でもどこかで滞る部分があると、それも腫れが治まるのを遅くする要因の一つとなってしまいます。

インナーマッスルで関節の安定性が得られないと、アウターマッスルによる代償でアウターマッスルが過緊張となってしまいます。
そうなると、それもまた血流を阻害する要因となりえます。

骨癒合を阻害しない

この時期はまだまだ骨が完全に癒合するには程遠いため、骨癒合を最優先に考えるべき。
そのために荷重制限があります。

過度なROMexや筋力exは骨折部に離開する力が加わり、骨癒合を阻害する恐れがありますので注意しておくべきです。

 

足関節背屈では、無理に背屈を引き出そうとすると、腓骨遠位は後下方へ牽引されるため、骨折部には離開する力となります。

足関節底屈には回外を伴うため、腓骨遠位には牽引する力が加わり、これもまた骨折部には離開する力となります。

しかし、全くROMexをしなくてもいいというわけではないので、この方向へ動かすと骨折部にはどのような力が加わるのか?
これを常に考えてリハビリを進めるべきです。

 

この時期はまだ荷重できないため、足部に刺激が入る機会が少ないです。

足部から歩行時の荷重刺激のような刺激を入力してあげることも有効です。

<足底から歩行様の荷重刺激の入れ方>
1.背臥位にて両足底を把持
2.内果直下から同側の肩峰に向かって押圧
3.歩行時のリズムとなるように、左右交互に押圧刺激を繰り返す

荷重開始から全荷重まで(4~6週間程度)

これくらいの時期から徐々に荷重量を増やしていきます。

骨折部の状態や疼痛をみて1/2荷重から2/3荷重と段階をふまずに、全荷重の許可が出ることもあります。

荷重時のポイント

荷重が開始されたとはいえ、十分に荷重できなかったり疼痛があることもあって、受傷前のようにきれいに荷重できないことのほうが多いです。

この際に代償が強い荷重方法で荷重を続けると他の部位に痛みを出現させる要因となったり、骨折部の治癒を遅らせる要因ともなります。

 

具体的には以下のポイントに着目して指導しましょう。

<荷重時のポイント>
・体幹が前屈していないかどうか
・臀部が後方に引けていないかどうか
・上肢による過剰な支持となっていないかどうか
・外側荷重となっていないかどうか
・内果の直下に荷重できているかどうか

内果の直下で荷重することで、腓骨ではなく脛骨で体重を支えることができます。
本来は脛骨で支えるようにできていますが、外側へ荷重すると腓骨で支えなくてはいけず、骨折部への過剰な負担となりやすいので注意が必要です。

足部の筋力トレーニング

荷重制限によって足底にあまり刺激が入らない時期があるため、足部内在筋の機能低下が起こっている可能性があります。

足部は小さないくつもの骨で構成されており、微妙に動くことで身体全体の動きに関わっています。
インソールで数mmのパッドを加えただけで歩行が変化するのもそのためです。

それだけ敏感な部分であるということ。

それだけに、内在筋が機能せずにガチガチな状態では荷重開始となってもそもそも荷重できるような準備が整っていないのです。

内在筋によって関節の安定性が確保され、外在筋によって関節運動がなされるという流れが理想的。

 

私が実際に普段取り入れている練習を以下に記載します。

<内在筋のトレーニング>
1.母趾、第2~4趾、小趾それぞれ個別に動かしてもらう
2.足趾屈曲位で伸展に対しての抵抗運動をする

<ポイント>
・母趾、第2~4趾、小趾それぞれ別の筋が作用するため、個別に動かす必要がある
・外在筋はDIP関節、内在筋はMP関節に作用するため、MP関節から屈曲するように抵抗部位の考慮、動かし方の指導をする
・弛緩した肢位でも筋出力を発揮できるよう屈曲位で実施

長母趾屈筋

短母趾屈筋

腓骨周囲の癒着部位

腓骨の骨折で手術もしたとなれば、当然腓骨周囲の組織に癒着が生じている可能性が考えられます。

腓骨の上に腓骨筋があり、その後方には長母趾屈筋が走行しているため、両筋間で癒着が生じる可能性があります。

長母趾屈筋は腓骨後方から距骨、踵骨の後方を走行して母趾へ向かっています。

そのため、長母趾屈筋の緊張が高くなると、距骨、踵骨が前方へ押し出され、背屈に伴う両骨の後方移動が制限され、背屈制限につながることが予測できます。

背屈制限があると、歩行にも大きな影響を及ぼすので、この部分の癒着は必ずチェックしておくべきです。

足関節の関節可動域運動

可動域運動も闇雲におこなっては逆効果になりかねないので、関節構造に合った動かし方をするべきです。

具体的には以下の記事をご参照ください。

まとめ

・腓骨は足関節の動き、歩行時の衝撃吸収に関与

・荷重開始までは腫脹の軽減、骨癒合を優先し、筋トレやROMexは無理に進めない

・荷重開始からは跛行によって負担のかからないように可能な範囲で指導する

・足部内在筋は母趾、第2~4趾、小趾それぞれ別の筋が作用するためトレーニングも分けてする必要がある

おわりに

いかがでしたか?

腓骨はあまり着目されない部位かもしれませんが、足関節の動きにも関与していますし、歩行においても役割を持っています。

また、足部内在筋もあまり着目されない部位かもしれませんが、足部の微妙な調整に関与していますし、外在筋とも強調して働きます。

決して軽視せず、状態に応じてリハビリを進めていっていただければと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

参考・引用文献

1.日本骨折治療学会

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