2017/09/10

足関節の可動域制限を考える

 

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この記事を書いている人 - WRITER -
松井 洸
ロック好きな理学療法士。北陸でリハビリ業界を盛り上げようと奮闘中。セラピスト、一般の方へ向けてカラダの知識を発信中。
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本日は足関節の可動域制限の考え方についてご紹介します。
足は細かい骨や筋肉が多く、痛みや可動域制限について難渋してしまう場合も少なくはないと思います。
そんな悩みをもつセラピストのために少しでも参考になれば幸いです。

足関節背屈可動域制限

多くの場合、臨床では背屈制限が問題として挙がりやすいのではないでしょうか。
足部の骨折による免荷期間があると歩行によって背屈方向へ動くことがなくなり、腫脹や浮腫によって可動域制限が狭い状態が続くため、底屈位となりやすいです。

 

背屈制限があると、歩行時には前足部で過剰に代償したり、膝関節の過伸展で代償したりと足部は唯一地面と接する部位でもあるため、足部の状態が悪いと全身に影響が波及します。
それだけ足部は全身と関係が深く重要な部位となりますので、十分な背屈可動域を獲得することが必要になってきます。

背屈の制限因子

筋肉の要素

下腿三頭筋、長母趾屈筋、長趾屈筋、後脛骨筋の柔軟性低下

背屈時には距骨が後方へ滑るため、距骨の後方組織に十分な柔軟性がないと、距骨が後方へ滑ることができません。

 

下腿三頭筋は踵骨に付着しており、足底腱膜と連結していますので、ここの柔軟性が低下すると、弓矢のように踵骨を前方に押し出してしまい、踵骨を介して距骨が前方へ変位しますので、結果的に背屈制限が起こります。
さらに、踵骨への移行部はアキレス腱となっていますが、アキレス腱の下には脂肪体があり、脂肪体とアキレス腱間で癒着が起こりやすいポイントとなっています。

 

長母趾屈筋は距骨の後方を走行していますので、直接的に距骨を前方に変位させうる筋肉です。

 

後脛骨筋は下腿におけるインナーマッスルであり、腓骨筋と連結して下腿を左右から挟んで互いに引き合うことで足部の安定性を生み出しています。(クロスサポートメカニズム)
安定することで周囲のアウターマッスルにより十分な動きを出すことが可能となりますが、ここが硬いとアウターマッスルは足部の安定性を求めて制動するように働きます。

 

長母趾屈筋、長趾屈筋、後脛骨筋は足根菅を通り、前足部へと走行しています。
ここの硬さが背屈に伴う回内制限を引き起こしやすいです。

さらに、足根菅と屈筋腱との間で癒着を起こすと、背屈に伴って足根菅は踵部方向へ伸張されますが、十分に伸張できなくなるので癒着による制限も考えられます。

 

前脛骨筋、長趾伸筋、長母趾伸筋の筋出力低下

これらの筋群は足関節背屈に関与しますが、ここの筋出力が低下すると底屈筋群が優位に働き、背屈に対して抵抗しやすくなります。(相反神経抑制)

伸筋群が伸張位で固定された状態となると、前脛骨筋-長趾伸筋間、長腓骨筋-長趾伸筋間で滑走が悪くなり癒着が起こりやすいです。
この部位に癒着が起こると、背屈時にうまく弛緩できずにつまるような抵抗感が生じます。

さらに、この3つの筋群は伸筋支帯の下方を走行しており、この部位でも癒着が生じやすいので評価しておくべき部位です。

 

腓骨筋の柔軟性低下、筋出力低下

外果の後方を走行する腓骨筋は背屈時には伸張されるため十分な柔軟性が必要です。
さらには、背屈時は回内方向へも動きが伴うので腓骨筋による回内への動きも必要ですので、柔軟性と筋出力両方がバランスよく発揮できなければいけません。

 

腓骨筋の後方では長母趾屈筋が走行しており、ここも癒着を起こしやすい部位です。
ここで癒着が生じると、腓骨筋による回内方向への動きの阻害、背屈方向への抵抗両方に影響を与えます。

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骨の要素

距骨の前方、外側変位

筋肉の要素でも述べましたが、足部後方の軟部組織の柔軟性が低下すると、踵骨・距骨は前方へ押し出されるように変位してしまいます。
前方変位が起こると、背屈時には遠位脛腓関節が開排し、そこに距骨がはまるように後方へ滑る動きが阻害され、制限となります。

 

腓骨の下方変位、立方骨の下方変位

背屈時には遠位脛腓関節は開排し、腓骨は脛骨に対して挙上・外旋します。
しかし、臨床上多く認められるのが、下腿外旋・距骨下関節回内により、距骨は外側変位、外側荷重となり、結果的に腓骨は下方へ変位せざるをえなくなります。

腓骨が下方変位すると、その直下にある立方骨も下方変位し、腓骨・立方骨は下方変位した状態で周囲の脂肪組織などと癒着を起こして固まってしまいます。

また、立方骨はアーチ構造に大きな影響を与え、重要なパーツとなりますので必ず評価してみてください。

 

踵骨の前方、回外変位

足部の構造上、足関節は回内よりも回外しやすくなっています。
そのため、踵骨は回外した状態で固まりやすくなります。

 

踵骨は骨盤や脊柱などのように、足部においては土台となるパーツであり、踵骨の位置関係で足部の他のパーツに影響を与えますので、踵骨がどの方向に制限されているか必ず評価しておくべきです。

踵骨が回外位で固定されると、足根菅が短縮、その直下を走行する屈筋腱と癒着を起こして踵骨回内に対して制限因子となります。

 

評価のポイント

・踵骨後方の軟部組織の柔軟性

・距骨前方の軟部組織の柔軟性

・踵骨、距骨、立方骨、腓骨の位置関係

上記の3つにまずはポイントを絞って評価してみると、足部がどの方向に制限されており、なにが原因となっているのか見えてきやすいと思います。

 

おわりに

足部は細かいパーツが多く、それらのパーツ同士が連動しあっているので、評価するにはなかなか骨が折れますが、適切に評価してアプローチすることで全身へ必ず良い影響を与えますので、ぜひこの記事を参考に試していただけると嬉しいです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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