2017/09/09
横隔膜からみた呼吸リハビリテーション

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近年、呼吸器疾患の患者数は増加傾向にあり、呼吸リハビリテーションの重要性が示唆されています。
呼吸器疾患のみでなく、生きている限り呼吸は誰でもしますので、呼吸を考える意義は大いにあると思います。
今回は、横隔膜に視点を当てて呼吸について考えてみようと思います。
目次
横隔膜の解剖学
起始:胸骨部 剣状突起
肋骨部 第7〜12肋骨・肋軟骨の内面
腰椎部 L1〜3または4にわたる内側脚および前縦靭帯
停止:腱中心
前面は胸骨から肋骨にかけて付着、後面では腰椎に付着しており、ドーム状に形成されていますので呼吸時には3Dで動きを考える必要があります。
吸気時に腱中心を支点として収縮し、下制します。
ある程度下制すると、腱中心は横隔膜の下部に位置する肝臓に固定されるため、下部肋骨が横方向へ広がります。
横隔膜は安静時では1.5cm、最大吸気位では10cmも下制します。
ですので、横隔膜が下制する余裕が必要なので肝臓など内臓の柔軟性や横隔膜と下方で連結している大腰筋、腰方形筋の柔軟性も呼吸においては重要となります。
横隔膜の特徴
①.吸気筋
②.腹圧を加える
③.重量挙げ筋
④.胸腹部循環ポンプ
それぞれ少し解説します。
吸気筋
これはかなり基本的な部分ですのでみなさんご存知ですね。
吸気に合わせて横隔膜が収縮して下制、呼気時には挙上して元に戻ります。
腹圧を加える
放尿時、排便時など横隔膜が下制し、腹横筋・骨盤底筋群・多裂筋とともにインナーユニットを形成し連動して働くことで腹部をキュッと締めるように作用し、腹圧が高まります。
重量挙げ筋
深吸気後に息をこらえると、先ほども出てきた横隔膜を始めとするインナーユニットがまず働き、腹圧を高めることで腰椎の安定性を高めます。
これによって脊柱は自然に上方へと伸展していくことができます。
胸腹部循環ポンプ
横隔膜が吸気時に下制することによって胸腔内は陰圧となり、腹腔内は陽圧となりますので、血液やリンパ液は陰圧の方へ流れやすいので心臓の方へ戻りやすくなります。
心臓の機能だけでなく、横隔膜の機能を考えることで全身の循環を良くすることができます。
横隔膜の機能を良くすることで心臓の負担を減らすこともできると思いますので、この辺は理学療法士が活躍できるところかと思います。
横隔膜の触診
・剣状突起の下方
・第7〜12肋骨の内側面(前面から触診)
・Th12付近の椎体側面(背面から触診)
確実に触っているという実感は得られにくいですが、吸気時にわずかに収縮を感じることができます。
横隔膜でも各部位に分けてどこが機能していて、どこがしていないか評価することでアプローチする部分が明確になります。
横隔膜が機能するための前提条件
・下部胸郭の柔軟性
・下位胸椎の可動性
横隔膜が機能するためになにが必要なのか考えるとどうアプローチしたらいいか整理しやすいです。
主に上記のようなポイントが挙げられると思います。
下部胸郭の柔軟性
吸気時には横隔膜が下制、下部胸郭は横方向へ広がることはお伝えしました。
そのため、下部胸郭が広がるだけの可動性がないと横隔膜の動きが制限されるので十分に機能を発揮することができません。
下部胸郭の可動性を制限する要素としては、腹直筋・広背筋・肋間筋・大腰筋・腰方形筋の柔軟性低下などが挙げられます。
腹直筋・広背筋は胸郭の上から覆うようにして走行しているので胸郭の広がりを直接的に制限します。
肋間筋は柔軟性が低いと肋間の広がりが制限されるので、これも下部胸郭の横方向への制限となります。
大腰筋・腰方形筋は胸郭の深部の下方に付着しているので、緊張が高くなると胸郭は下方へ引かれて横方向への動きは制限されます。
さらに、大腰筋・腰方形筋は横隔膜とディープフロントライン(DFL)上で連結があるので胸郭から間接的に動きを制限、横隔膜との連結から直接的に横隔膜の動きを制限しますので重要なポイントとなります。
下位胸椎の可動性
下位胸椎の可動性が悪くなり変位すると胸椎と肋骨は胸肋関節、肋横突関節を形成していますので、肋骨にも偏位が連鎖して胸郭の動きに偏りがでます。
棘突起が一側に偏位すると、偏位した側の肋骨は後方回旋し反対側の肋骨は前方回旋します。
これにより、後方回旋側は既に胸郭が広がった状態となっており吸気する余裕がない、あるいは弛緩できず呼気に制限がでることが予測できます。
前方回旋側は、吸気時の胸郭の広がりが制限されることが予測できます。
下位胸椎の可動性が制限される要素としては、大腰筋・多裂筋・広背筋の柔軟性低下によるものが挙げられます。
大腰筋はTh12の椎体、肋骨突起に付着しているため、一側大腰筋が硬くなるとその方向へ椎体が引かれて胸椎が偏位してしまいます。
多裂筋は椎体の対側への回旋作用をもっているため、硬くなると棘突起は同側へ偏位します。
先ほどのインナーユニットのお話から考えても多裂筋と横隔膜は関係が深そうですね。
広背筋は停止部で椎体に付着していますので、硬くなるとその方向へ椎体を引っ張ってしまいます。
上肢由来の偏位も考えられますね。
おわりに
横隔膜への直接的な評価、横隔膜へ影響を与えているものの評価の双方向から考えることで具体的な制限因子が理解しやすいと思います。
なぜそうなっているのかを追求していくことが重要となってきます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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